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イベント(078KOBE)

都市型フェスティバルの未来 〜After/Withコロナ時代のあり方を考える

2020.06.08

Information
078KOBE 2020 ONLINE
開催日 : 2020.05.02〜2020.05.03

近年、都市を舞台にした多分野複合型フェスティバルが世界的に注目を集めている。2017年から神戸で行なわれている「078KOBE」もそのひとつで、市民、行政、企業、教育機関の異ジャンルが交わって、テクノロジー、エンターテイメント、エデュケーション領域を横断する市民参加型フェスティバルだ。

2020年は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で、延期・中止となるイベントが多いなか、「078KOBE」は会場をオンラインに移し、全9会場にてトークセッション、アートカンファレンス、ワークショップ、ミートアップ、バーチャル展示、プレゼンテーション、VRシアター、DJ Live、ラジオを展開した。

2部構成のトークセッションでは国内4フェスティバルの実行委員長・事務局長が集結し、プレゼンテーションと『都市型フェスティバルの未来 〜After/Withコロナ時代のあり方を考える』と題したパネルディスカッションを展開。”今”と”これから”における都市型フェスティバルのあり方について、オンラインで議論し、新たな可能性を模索した。

出演者は、NoMaps実行委員会JK(事務局長)の廣瀬岳史さん、一般社団法人CiP協議会理事長の中村伊知哉さん、明星和楽実行委員会 実行委員長の松口健司さん、078KOBE共同実行委員長 藤井信忠さんの4名。モデレーターは、078KOBE実行委員会 Interactive部門 企画統括の舟橋健雄さんと、Peatix Japan株式会社 共同創業者/取締役・CMO 藤田祐司さんだ。

北海道・札幌を舞台に、産官学提携のイベントでより良い未来を

廣瀬岳史さん(以下、廣瀬):NoMapsは、2016年にプレ開催を始めて、延べ4回イベントを開催しました。その名の通り『地図にない領域を自らの手で切り拓く開く、現代の開拓者のためのイベント』として、イノベーターやアーリーアダプターの集まる場作りに努めています。

特徴は、産官学がかなり密に連携していることです。民間のIT企業や音楽フェスの運営会社に、札幌市など幅広い領域の方が協力し、先端技術や新しいアイデアをベースにして、次の時代の価値観・文化・社会の姿を提案するコンテンツを提供しています。

NoMaps2019 では、ビジネスカンファレンス、ピッチコンテスト、札幌国際短編映画祭、音楽ライブ などを展開。そのなかには、VRドリームセレクション&プラネタリウムライブ2019、札幌駅前の地下歩行空間での技術展示など、一般向けの近未来体験も含まれています。

また、北海道を実証実験の聖地にすることも目指しており、街を舞台とした先端技術の社会実装も行なっています。例えば、自動運転車やAIで配車するSAVSを走行させたり、電動キックボードLUUPの体験会を開催したりしました。さらに、イベントに集まった方々の交流をミートアップという形で深め、未来の最高峰にともに登る仲間を探す場としても機能しています。昨年は10月の半ばに5日間、延べ124の事業を行い、2万4000人弱が来場しました。全国・海外から来た方が繋がることで、新しいビジネスにもつながっていきます。

今年は、10月14日〜18日にNoMaps2020の開催を予定していますが、新型コロナの動向を見据えながら実施を検討している状況です。

ただ正直なところ、今後は誰も経験がしたことのない社会、つまりNoMaps(地図がない)な状況になり、ウチがしていることはこれからの時代にマッチするのでは、とも思っています。我々のメッセージは、「新しい技術やアイデアで良い社会を創造する」こと。これは、新型コロナによって社会が大きく変わろうとしてる現在も全く変わりません。でも、どうせ変わるなら、技術とアイデアと勇気でこれまでより良い社会を創りたいと思っています。

その反面、気持ちの面では少しの変化があって、「各人が自分の考える未来の最高峰に登る」よりかは「挑戦者だけでなく、みんなで次代の安住の地に向かって山を越えていく」タイミングだと思っています。なので、NoMapsをよりマスに開いていき、みんなで次の社会を作るための議論の場にすることを画策しています。

東京・竹芝を、21世紀”ポップテック”の出島に変える!

中村伊知哉さん(以下、中村):私は、ポップカルチャーとテクノロジーを掛け合わせた「ポップテック」の街づくりとイベントをしています。ポップカルチャーは音楽・ゲーム・アニメ・スポーツなどで、テクノロジーは5G、ロボット、AI、新しいモビリティなどです。

私はこれまで、世界各国のテックやアートイベントを見て回ってきましたが、アメリカで30年の歴史を持つ「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)」や、オーストリアの「ARS ELECTRONICA(アルスエレクトロニカ)」は、ポップさが足りないし、メシが不味い(苦笑)。一方、パリの「Japan Expo(ジャパンエキスポ)」は、ポップでメシはウマいがテックが足りない。つまり、どこも一長一短があると思っていましたし、そういうイベントにはどこでも共通して日本人が多いんです。それならば、トップテックでメシウマなイベントは日本で開催したらいいのでは、と思ったのです。

そこで私はまず、東京でトップテックがぎゅぎゅっと詰まった街づくりを進めています。東京都が港区竹芝に所有する土地を再開発し、コンテンツ・メディア・ITやiotの先端を集めたデジタル×コンテンツの産業集積地として、今年の9月に街開きします。その実施母体は、コンテンツ(C)・イノベーション(i)・プログラム(p)の頭文字をとってCiP(シップ)と名付けました。

簡単に言うと、研究と人材育成ビジネスを街ぐるみで支援をする企画で、イメージとしては、シリコンバレーとハリウッドを合体させた、ポップで面白い街。今、約50の企業や団体が参加して、民間主導で政府にも協力を頂いてます。

また、国家戦略特区の認定を受けたので、これまでできなかったことを全部打ち破る、いわば21世紀の出島にしたいと思っています。例えば、電波の特区、著作権の特区、ロボットの特区など。東京大学・慶応大学・理化学研究所などと提携した開発を進める一方で、アントレプレナーを支援するファンドを立ち上げ、ポップ企業に出資も開始しました。いま、その中心部に40階のビルを建設しており、8階以下を我々がイベントや産学連携に使います。9階以上にはソフトバンクの本社が入ることが決まりました。ソフトバンクがデータを集めて解析してスマートビルにするとのことなので、そちらとも連携予定です。東京をはじめ、日本各地の類似の構想をデジタルで繋げた横展開も企画しています。

そして本題ですが、我々が東京で開催しているイベントは、簡単に言うと078KOBEに倣ったものです。第一弾は、2018年の夏に音楽・オタク・Eスポーツを集め、さらに吉本芸人にもお越しいただきました。これを2020年の9月の街開きに合わせて本格的に開催し、今後毎年続けて、ゆくゆくはSXSWを超えるイベントに育てていきたいと思っています。

本格的にイベントを開催するにあたり「チョモロー」と命名しました。日本語では「ちょっと先の面白い未来」、英語では「Change Tomorrow」から音を取っています。お笑いにしろ音楽にしろ何にしろ全部、ちょっと先の面白い未来をこのイベントでお見せします。本来は、7月に開催しようとしていましたが、新型コロナの影響で延期し、今のところ9月19日か20日に開催予定です。

異なる人々の交わりによって、新たな価値の創造へ

松口健司さん(以下、松口):私たちは「異種交創」のコンセプトのもと、福岡で2011年から明星和楽というイベントを主催しています。その目的は、年齢・ポジション・分野の異なる方々が交わる場を提供することで、新しいモノ・コトを創造する”装置”となること。現在は、メディアも運営し、継続的な情報発信もしています。

具体的には、様々なセッションやピッチコンテストを行なっていますが、毎年テーマを変えていて、去年は「Post-Reality(新たな現実)」というテーマでした。特に、ピッチコンテストは2011年当初からやっていて、去年も約5種類ほど開催しました。また、誰もが自由に新しいモノ・コトを応募できる「勝手にクリエイティブ大賞」という一風変わったアワードもありますし、近年は若いメンバーが運営の中心なので、学生ハッカソンにも注力しています。お洒落な制作物で参加者の目を楽しませるために、昨年はメンバーTシャツも自分たちでシルクスクリーンで制作しました。

拠点は福岡ですが、台湾やロンドンなど海外での開催歴もあり、ここ1〜2年は海外のスタートアップも招待して国境を越えた面白いモノ・コトの創造に励んでいます。

また、昨年には地域コミュニケーションの一環として、メンバーで九州を一周するキャラバン「WARAVAN in Kyushu」を開催。新型コロナの影響のある状況では難しいですが、オフラインでの繋がりも大切にしています。10年目を迎える今年は、記念のタブロイド紙も制作予定です。

7分野のエキスパートと神戸市民が作り上げるフェスティバル

藤井信忠さん(以下、藤井):私たち078KOBEのミッションは、神戸の都市生活をデザインし、実験都市に変えることです。2017年から始めて徐々に規模が大きくなり、今年で4回目。都市で楽しむ音楽・映画・アニメ・ファッションと、社会変化を加速させるIT、上質な食文化、そして次世代の子供という7分野にわたって、市民参加型のイベントとして開催しています。

078KOBEの特徴は、各分野のエキスパートと一般の皆さんが一体となったサイクルを持っていること。つまり、参加者には078KOBEで体験したことを普段の生活にフィードバックしてもらい、そこで得たものをまた来年の078KOBEの場に持って来てもらうんです。SXSWが30年続いて新たな価値を生み出したように、私たちの試みも30年続けて、神戸独自の価値を生み出すことを期待しています。

去年のテーマは「風穴」で、たくさんの分野の壁をぶち抜いて新しい価値を作るという意図でした。そして今年は、その開けた穴から風が出てそれが渦となる……ということで、「渦」をテーマにしています。本来ならば、JR三ノ宮駅周辺のみなとのもり公園及びその隣のデザインクリエイティブセンター神戸KIITO、神戸ハーバーランド高浜岸壁で行なう予定でしたが、新型コロナの影響でオンラインに移行。ただ、078KOBE 2020はオンラインだけではなく、8月29〜9月6日に延期予定ですから、皆さんともう一度喜びを分かち合いたいと思っています。

パネルディスカッション「都市型フェスティバルの未来 〜After/Withコロナ時代のあり方を考える」

藤田祐司さん(以下、藤田):今回のディスカッションは、都市型フェスティバルをテーマにしていますが、そもそも都市型フェスティバルとはどうのように定義できるものなのでしょう?

藤井:文字通り、市民が生活する都市部でやるお祭りということになると思いますが、お祭りを通して街を元気にするという試みだと認識しています。

藤田:ちなみに、藤井さんは先ほど「30年後の神戸の価値」に触れていましたが、どういう意味での30年でしょう?

藤井:SXSWに倣っての30年です。街を代表するような世界に名だたるイベントに育つには、5年や10年では無理だと思っています。

藤田:それぐらいのスパンで街づくりを考えていくということですね。

舟橋健雄さん(以下、舟橋):日本の都市型フェスティバル運営者のなかには、SXSWを参考にされている方が多いですが、皆さんにとってのSXSWはどんな存在ですか?

廣瀬:NoMapsは元々、日本版SXSWとも称されているので、参考にしていますし、実際に現地にも行きました。個人的に、期間中のオースティンの盛り上がりや人同士の交流の様子には、今でも強い憧れをもっています。ただ、あくまで参考にしつつ、自己路線を模索することが、札幌でNoMapsを開催する意義として必要だと思います。

中村:チョモローは、日本の音楽業界と教育業界を中心にやってこうとしてるので、SXSWは非常に参考にしています。とはいえ、実際にSXSWを見ると、面白くポップにやるのは日本の方が得意なんじゃないかなとも思うんです。あとは先述しましたが、メシに本気度が感じられない(笑)。

舟橋:やっぱり、都市型フェスティバルとしては、美味しいご飯は重要ですよね。福岡の明星和楽は如何でしょう?

松口:私は明星和楽の2代目実行委員長を2016年頃からやらせてもらっているのですが、中心メンバーは誰もSXSWに行っていません。もちろん、スタートする際にインスパイアは受けたのですが、SXSWを想像しながら独自性をもって作っています。個人的には、近いうち行きたいという気持ちはありますが、まあ、妄想しながらやってます(笑)。

藤田:実物を見ていないと、ある意味、独自性が生まれそうですね。藤井さん、078KOBEは始動前に実行委員でSXSWに行かれたと聞いていますが、どうですか? 

藤井:私は2016年に出展側で出たのですが、偶然神戸からの参加者が多く、現地で出会って「神戸でできたら面白いよね!」ということで、翌年から始めました。

藤田:個人的には、面白い都市型フェスティバルって、日本ではここ10年ほどで一気に増えてきたと感じているのですが、世界にはSXSWのように30年歴史のあるフェスティバルがある一方で、日本はなぜ20年の遅れをとったのでしょう。

中村:日本には各地に昔ながらのお祭りがあるので、必要性があまりなかったのかもしれませんね。そして、自らが培ってきた現代的なカルチャーを、正しく自己評価できていなかったのでしょう。2002年にクールジャパンという言葉がアメリカから入ってきたことで、日本人は自分たちの凄さを正しく自覚し始めた。これからすごくパワーが出てくると期待しています。

藤田:視聴者から『日本は表現規制が緩いから、うまくまとまってるんじゃないか』というコメントが届きましたが、漫画・アニメ文化を含め、ポップカルチャーにおける規制のユルさってどうなのでしょう?

中村:実は日本は、自分達が思っているほど表現の規制は強くはないんですね。例えば、ドラゴンボールは世界的に人気ですが、作品中でずっと殴り合いをしているのだから、日本以外では作れません(笑)。ここ10年ぐらいで海外と比較して、日本は表現が自由だと自覚したから、イベントをやり始めたわけですよね。

舟橋:イベントを主催するにあたって、地元の方との関わりはどう意識していますか?

松口:九州には元々お祭り好きなカルチャーがあるので、私たちもお祭りの雰囲気でやりたいと思っています。そして、地元に様々なコミュニティーがあるなかで、「異種交創」を掲げているとおり、ジャンルを超えた方々が交わるイベントというポジションを確立したいです。そして現在、大学生など若者を積極的に取り込み、明星和楽との関わりによって面白い若手が育つように努めています。

藤井:078KOBEは、成り立ちから行政にがっつりサポートしてもらっているんですけど、基本的には市民発のイベントという位置付けになります。なので、実行委員会の皆さんも市民の方がメインです。

藤田:チョモローはこの9月に街開きとのことですが、竹芝はいかがでしょう?

中村:うちはまだ全然駄目で、これから街開きなので、全く認知されていないと感じています。東京は、新宿や渋谷や銀座など大きな都市が集まっている特殊な都市です。そのなかで、竹芝には人もあまり住んでないし、更地みたいなところでイチから取り組んでいるので、どうやって地域と一体化していくかが、一番の課題だと捉えています。

藤田:竹芝を選ばれた理由はどこにあるのでしょう。

中村:むしろ何もなかったからですね。土地も東京都の持ち物ですし、ビルを立てて何かを作らないかという話があったので、皆が集まって進めています。

藤田:まだ街がないから、地元の人との交流もなくて当たり前で、ゼロから街づくりをしていくということですよね。

舟橋:でも、SXSWもオースティンという小さな地方都市から現在に至っていますから、30年というスパンで見れば不可能なことではないと思います。

中村:逆に言うと、東京には古くからある街もたくさんあるので、そこで出来ないことをやるしかないと思っています。

舟橋:北海道は土地が広いですが、いかがですか?

廣瀬:NoMapsは、皆さんと比べるとカバーしようとしている範囲が圧倒的に広いです。都市型フェスと言いながら、北海道全域で見たら全然都市ではない地域も対象にしたいので、行政との関わりはものすごく大事です。また、NoMapsは、一般向けというよりかは、新しい社会を作りたい方々向けの場という性格が強い。従って、内容は社会・行政・暮らしを変えるにはどうしようといったものになるので、官公庁との関係性も強く意識しています。

藤田:地元の方との関係で言うと、札幌はエリアがとても広いですが、広いがゆえの長短はあるのでしょうか?

廣瀬:正直、全道としては巻き込みは十分ではありません。昨年からは釧路・根室・道東でも開催して、地域に浸透してきていますが、最終的に北海道全体(特に基幹産業である農林水産関係)をアップデートすることが目標です。

舟橋:行政との強いタイアップがNoMapsの強い特徴のように感じましたが、他の方は行政との関わりはいかがでしょう? 

松口:福岡では、2012年に現市長の高島さんがスタートアップ宣言をし、行政のトップダウンの部分と民間のボトムアップの部分が上手く連携できて現状があると感じています。例えば、実証実験には法律の部分的な解放を必要とする場合がありますが、行政は規制緩和によって協力してくれます。最近では、電動キックボードの実証実験を限られたエリアで許可するような事例もありましたね。

藤田:今、実証実験というキーワードが出てきましたが、東京を中央として捉えた場合、地方であるがゆえに実証実験がやりやすいという面はありますか? NoMapsも実証実験には相当力を入れていますよね。

廣瀬:札幌市や経産局など行政が絡んでいるおかげで、規制をできるだけ早くクリアできる体制を整えています。

藤田:中村さん、東京では実証実験はやりづらいかと思うのですが、竹芝は民間企業も絡みますし、行政とは少し距離をとったところで新たな取り組みができるのでしょうか? その辺りはどうお考えですか。

中村:我々のプロジェクトは、竹芝が国家戦略特区に指定されたことが発端なので、国・東京都とはやり取りをしているのですが、本来もっともコミュニケーションを取るべき港区との関係が薄いのが課題です。各地で数十年続いてるイベントは、行政と民間と住民の良好な関係の下に成り立っているはずなので、まず民間主導で実証実験をして、地元の自治体に認めてもらい、関係を構築したいと思っています。

藤田:実証実験を通した地元との関係づくりが、都市型フェスティバルの一つのチャレンジのポイントにもなるということですね。その点、民間と行政がタッグを組んだプロジェクトの多い神戸はどうでしょうか?

藤井:神戸は工業産業都市を標榜して20年経つので、民間と行政はタッグを組めていますね。さらに今年、行政の組織改編で「企画調整局つなぐラボ」ができました。民間と行政の間のインターフェイスになる若い方々が非常に頑張っているのは特徴の一つかもしれません。

オンラインイベントに可能性はあるのか?

藤田:続いて、新型コロナによってイベントもオンライン化が急速に進んでいますが、そのなかで都市型フェスティバルを開催する意味はどこにあるでしょう。藤井さんはどういう経緯でオンラインに踏み切りましたか、そして、オンライン移行をどう考えていますか?

藤井:現在は新型コロナのせいでイベントの延期・中止を余儀なくされていますが、一方で情報技術の発達によってオンラインのカンファレンスやセミナーができる時代でもあるわけです。今回、078KOBEでもオンライン開催に関して実行委員会で議論をしたところ、よくよく考えると、音楽や映画やファッション、キッズのコンテンツだってオンライン化できるコンテンツがあることに気付きました。短い準備期間のなかで多彩なコンテンツを揃えられたのは、078KOBEらしさだと自分たちでは思っています。そして、今後の都市型フェスティバルにおいては、リアルな場の取り組みとバーチャルの取り組みのミックスがポイントとなるのではないでしょうか。神戸の取り組みとして音楽を例に挙げると、「ライブハウス ジャッジメント in 神戸」というバーチャルなライブハウスでライブハウス事業者が活動していく試みを始めました。

藤田:これからは全部オンラインに移行するわけでも、アフターコロナで全部リアルに戻るわけでもないでしょうから、藤井さんのおっしゃる通りですね。他の皆さんは、オンラインでのカンファレンスへの意見はいかがでしょう。

松口:今年の明星和楽は11月に開催予定ですが、オンラインも検討中です。ただ、個人の見解として、オンラインでの作りにくさは懸念しています。明星和楽はフランクな空間での思いもよらない出会いをすごく大切にしてきたので、100%オンラインとなると私たちの活動の魅力は半減してしまうのでは、というのが正直な意見です。

藤田:セレンディピティは一つポイントですよね。廣瀬さん、この辺りはどうですか?

廣瀬:今年のNoMapsはオンラインは当然やらなきゃいけないと考えていて、オフラインは今後の状況次第だと思います。私も現状ではオフラインならではの魅力を認めていますが、これから、オンラインでの交流をスムーズに出来る方法が生まれるかもしれないし、密への良い対策が生まれるかもしれない。どちらが先かはわかりませんが、フェスティバルの在り方は今後分散していくでしょう。社会においてもオンラインとオフラインの選択肢ができるでしょうし、都市と地方という観点でも、現在は都市一極集中型ですが、オンラインがより発達したら地方にも魅力が生まれて分散して住むようになる可能性もあるはずです。とはいえ、都市がなくなるわけではない。分散して住むのも良いという価値観が生まれてくるのでしょう。

藤田:これからは、オンラインとオフライン両方の在り方を模索していく時期に入っていくということですね。中村さんはどうでしょうか。

中村:皆さんと同様の意見です。現在、ライブ・イベントなどエンタメ業界が壊滅的被害を受けている一方で、netflixやECなど、新型コロナ特需のような状態になっている業界もあります。我々のイベントは、音楽やお笑いなどライブをオンラインに切り替え中の方々がコアになるので、9月にどう開催するかはまだ模索中です。ただ、僕自身としては、これからの人間の暮らし方という、より大きな宿題が降ってきている気がしています。歴史を振り返ってみると、都市は数千年かけて人類が集まって形成されたわけですが、14世紀ヨーロッパではペストで5割ぐらい死亡し、それでもまた集まって、約700年後にITが生まれました。ITが生まれた頃は、人間の暮らしは分散すると言われていたのに、実際はITを使って集まってきてしまった。そして今、新型コロナの大流行によって分散して暮らせと言われていますが、やはり、都市を求め続ける人もいるでしょう。ただ、これまでの満員電車ギュウギュウみたいな集まり方ではない、新しいバランスのある暮らしが作られるはず。そういう新たな暮らしにおけるイベントのあり方の答えを示せたらいいと思っています。

藤田:人類の歴史から辿った話はすごく分かりやすいですね。集合と分散との繰り返しのなかで、そのスパンが短くなってきているように感じるのは、恐らく技術やITの進化によって集まれる速度が上がっているからなのでしょうね。

中村:人間はきっと、リアルでは集まりたいんですよ。でも、新型コロナによってバーチャルでも集まれることが分かった。2つの方法が揃った今、その使い方を考えるべきでしょう。

舟橋:『アフターコロナにどんな未来になるか』は世界共通の関心事ですが、皆さんは、イベントを主催する立場からどんな未来を描いているでしょうか。

中村:私は、実は本業で世の中のIT化を30年くらい言い続けていたんです。テレワークや遠隔授業の導入が全然進まなかったのが、新型コロナでやっと実現したので、その意味では、以前の暮らしにあまり戻したくないというのが本音です。リアルでもオンラインでもやりたいことが出来る状況になったからこそ、これを活かして早く次のステージ行きましょう。イベントも同様に、リアルで価値が出せるものがあれば、バーチャルで楽しめるものもある。だから、後戻りしたくないと思っています。

舟橋:先ほど、松口さんはリアルをすごく大事にしてきたと仰っていましたが、その意味ではどうですか?

松口:答えはまだ出ませんが、前向きに考えると、オンラインのやり取りが一般化したことで、国内だけではなく海外ともつながりが身近になっていると感じています。ここ1〜2年、私たちは海外の事業者とも連携していると前述しましたが、以前はイベント前に少しオンラインで挨拶する程度しかつながりを意識していませんでした。今では、海外の方とオンラインで会話するハードルが下がったので、明星和楽としてはその内容をyoutubeや記事で発信したいと思っています。リアルの取り組みとしては、足を運ばないとわからない地域の魅力の伝え方を模索し、さらに今年は、10年目を記念したフリー雑誌も刊行予定です。

廣瀬:アフターコロナでは、単純に以前の暮らしに戻るのではなく、選択肢の幅が広がるのだろうと考えています。選択肢のなかにそれぞれ価値や魅力が生まれて、各自が選びとって楽しみを共有していくはずなので、前向きに捉えていいと思います。開催側がオンライン・オフラインともに可能性を感じて、色々と試して水平展開していけば、もっと面白い世界になるでしょう。

司会:今までの話を受けて藤井さん、078KOBEが描く未来を最後に聞かせてください。

藤井:オンライン・オフラインは手段でしかなく、大切なのはコンテンツの中身です。もちろん、コンテンツを輝かせる手段を考えることも重要ですが、今、我々がイベントを通して何を伝えたいのかを問われてるような気がしています。これまでの地方都市フェスティバルは、郷土料理や観光地といった地方都市の魅力にあぐらをかいていた部分もあったと思います。しかし、オンラインに移行するとリアルな魅力を共有しにくくなるので、コンテンツの魅力で勝負しなければなりません。まだ答えは出ませんが、今回のこの078KOBE 2020 ONLINEも、その試行への挑戦の一つかなと思ってます。

出演者

■ 廣瀬 岳史
NoMaps実行委員会 JK(事務局長)。北海道北広島市出身。大学卒業後、民間企業を経て民間シンクタンクに入社。以降10年に渡り、道内自治体の政策立案や地域活性化事業の運営等に従事。その後、現場により近いまちづくり系の会社に籍を移して、地域活性化や地域人材育成事業の企画・運営などに携わる。2016年 ”No Maps”の前身の一つである札幌国際短編映画祭関連の調査業務に携わったことを契機に、No Mapsに立上げから参画し、産官学の多様な主体が関わる事業の調整役を担う。2017年4月より現職。

■ 松口 健司
明星和楽実行委員会 実行委員長。20歳の時にシリコンバレーに短期留学。それをきっかけに取材メディアLoqui(ロクイ)を設立。大学休学中に株式会社サイノウを立ち上げ、異種交創をコンセプトに掲げるイベント”明星和楽”や、廃校を創業支援施設に利活用したFukuoka Growth Next内の”awabar fukuoka”などのオーガナイザーを務める。また九州のHR市場を盛り上げるべく、SUKIMA(スキマ)というマッチングサービスも展開中。

■ 中村 伊知哉
一般社団法人CiP協議会 理事長。1961年生まれ。京都大学経済学部卒。慶應義塾大学で博士号取得(政策・メディア)。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。1998年 MITメディアラボ客員教授。2002年 スタンフォード日本センター研究所長。2006年 慶應義塾大学教授。2020年4月よりiU(情報経営イノベーション専門職大学)学長。内閣府知的財産戦略本部、文化審議会著作権分科会小委などの委員を務める。CiP協議会理事長、吉本興業ホールディングス社外取締役、理化学研究所AIPセンターコーディネーター、東京大学客員研究員、慶應義塾大学特別招聘教授などを兼務。著書に『超ヒマ社会をつくる』(ヨシモトブックス)、『コンテンツと国家戦略〜ソフトパワーと日本再興〜』(角川EPUB選書)、など多数。

■ 藤井 信忠
神戸大学大学院システム情報学研究科・准教授。クロスメディアイベント「078」共同実行委員長。アーバンデザインセンター神戸(UDC078)センター長。2017年度から「078」の開催に携わり、2018年にUDC078を設立。音楽・映画・IT・ファッション・食・KIDS・アニメなどの分野をクロスさせ、神戸を起点としたあたらしい都市生活のデザイン手法の構築に取り組んでいる。

モデレーター

■ 藤田 祐司
Peatix Japan株式会社 共同創業者/取締役・CMO。慶應義塾大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア株式会社)で営業を担当 後、2003年アマゾンジャパン株式会社(現 アマゾンジャパン合同会社)に入社。最年少マネー ジャー(当時)として、マーケットプレイス事業の営業統括を経て、Peatixの前身となるOrinoco株 式会社を創業。国内コミュニティマネージャーチームを統括したのち、営業、マーケティング統 括を兼務。2019年6月 CMO(最高マーケティング責任者)に就任し、グローバルを含めたPeatix 全体のコミュニティマネジメント・ビジネスデベロップメント・マーケティングを統括。

■ 舟橋 健雄
078実行委員会 Interactive部門 企画統括。TEDxKobe(テデックスコウベ)ファウンダー兼オーガナイザー。(株)神戸デジタル・ラボ マーケティング室長。1975年神戸市生まれ。1995年の阪神・淡路大震災後、 大学の仲間と情報ボランティア活動を実施。その後、 仲間とNPOを立ち上げるなど、 神戸のNGO/NPOの草分けとして活動。2001年より京都のシンクタンク(株)シー・ディー・アイにて研究員として従事。2005年より神戸のITベンダー(株)神戸デジタル・ラボに入社。企画・営業・総務・社長室・広報・マーケティングなどの業務を担当。2010年より「オープンソースカンファレンス神戸」、 2011年より「神戸ITフェスティバル」を立上げ、 一企業を超えた地域の有志たちとITによる神戸の活性化にチャレンジ。2013年より「TEDxSannomiya」、 2014年より「TEDxKobe」のライセンスを取得し、 神戸にイノベーティブなコミュニティを醸成すべく活動。また、2017年より「神戸ITフェスティバル」を発展的解消するかたちで、クロスメディアイベント「078」(ゼロ・ナナ・ハチ)を開始し、初代事務局長として携わり、その後もIT部門(Interactive部門)の責任者として関与。

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