
イベント(CES2020特集)
体組成によってキャラクターを変化させる「テンソルステーション」
2020.06.04
2020年1月7~10日、ラスベガスで「CES 2020」が開催されました。CES(シーイーエス)は、160以上の国や地域から4500以上の企業が集まり、17万5000人以上が来場する世界最大規模の家電・技術見本市です。来場者のほとんどは業界関係者やメディア関係者となっており、その場で商談や取材が行われることも珍しくありません。
近年、日本企業の進出も目立つようになっており、今年は「CES2020 JAPAN TECH」として、9社が出展しました。その中から、合同会社サウザンスマイルズ(http://www.thousands-miles.com/ )の身体情報を取得するゲーム機「テンソルステーション」を展示していたブースの様子をお伝えします。お話は合同会社サウザンスマイルズ 技術部部長 和智湧斗氏にお伺いしました。
サウザンスマイルズのブース
サウザンスマイルズは今回、タニタの子会社として出展していました。社内で2019年9月に企画を打診し、11月に創業したばかりです。体組成計などを販売しているタニタの技術を利用しつつ、健康を訴える形で商品やサービスを展開するのではなく、エンターテインメントで無意識に健康意識が持てる仕組みやゲームとしての市場性を主張するのが目的とのことです。
「テンソルステーション」は、PCに接続するデバイスです。センサー部分のモジュールを開発しており、両手の微弱な電気を流して、その抵抗値から体組成を計算するアルゴリズムが入っています。ユーザーが両サイドにある棒を握ると、体組成を計測し、そのデータを元にゲームをプレイできます。
和智湧斗氏はもともとタニタ開発部門におり、身体の形状について研究していました。当然、技術には詳しかったのですが、健康を強要することはしたくなかったそうです。そこで、もともと好きだったゲームに絡めることを考えました。
「体組成を元にキャラクターの形や能力を変化させてプレイできます。ご自身の体の大きさや筋肉量、脂肪量からキャラクターが飛んだり、強いパンチが出せたりと、変化します。自身の体に合わせてプレイの仕方を変えられるのが特徴です。ゲームの中にいろいろな障害物があります。例えば壁の場合は、体の大きいキャラクターだとパンチで壊して、高くジャンプできるキャラクターなら越えていけます」(和智氏)
合同会社サウザンスマイルズ 技術部部長 和智湧斗氏
今回はデモなので、1分くらいで体験できるようなものにしたそうです。「テンソルステーション」はPCゲームのモジュールなイメージで、この機能を利用すればいろいろなゲームが実現できます。
例えば、格闘ゲームなら自分の身体情報をキャラクターに反映させたり、シューティングゲームなら移動速度を変化させるなど、活用方法はアイディア次第です。
実際にプレイしてみたのですが、ゲームは短期間で出展のために作ったものなのであくまでも動作確認といったレベル。とは言え、体組成を計測し、キャラクターに反映されたのは面白かったです。当たり前だが、筆者の体に合わせた一番大きなキャラクターになり、パワータイプになりました。
体組成によりキャラクターが変化。PCやコントローラーは既存製品を利用
「CESに出るのは今回が初めてで、来ていただいた人の反応を見たり、出資者を募るという形でご紹介しています。反応はとてもいいです。楽しむことを目的として、健康になれる仕組みだね、と言ってもらえました。海外のゲーム会社の方や投資家の方からも、いい反応をいただきました」(和智氏)
「テンソルステーション」はまだプロトタイプで今後も改良していくとのことです。名前の元になったのは行列などの概念を表す数学用語の「テンソル」で、体組成をキャラクターに反映させる時に、機械学習のアルゴリズムを使っているので、そのような名前にしたそうです。
「テンソルステーション」はゲーム機のモジュールとなるので、ここから得られたデータを利用するゲームを開発してくれるようなパートナーシップを結んでいきたいそうです。その時のために、「テンソルステーション」の開発パッケージとしてSDKを用意する予定です。
詳細は未定ですが、発売時期は2021~22年を目指しており、価格はハイエンドのコントローラーと同程度の3~5万円くらいとのことです。新型コロナウィルスの影響で自宅にいる時間が長くなっているので、ゲームXヘルスの需要は高まっています。サウザンスマイルズの製品が世に出るのが楽しみです。