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イベント(STARTUPS SELECTION® TOKYO)

【第9回】数千億円のミッションに挑む。楽天の広告配信システム開発。

2021.06.23

新進気鋭な若⼿スタートアップ起業家たちにスポットライトを当てる番組連動プロジェクト「STARTUPS SELECTION® TOKYO」。第9回目ゲストは、株式会社LOB 代表取締役の竹林 史貴さん。2018年にM&Aにより楽天株式会社(以下、楽天)のグループ傘下に入る。今回はM&Aの経緯やその後の裏話、今後の仕事への想いなど多岐に渡るお話を聞かせていただいた。

株式会社LOB 代表取締役 竹林 史貴さん

YAZAWA:本日のゲストは、広告プラットフォームの開発を行っている株式会社LOBの代表 竹林 史貴さんにお越しいただきました。
竹林さんは、私が2018年に立ち上げた会社に出資をしてくださっていたんですが、本当に面倒見が良くて頼れる方なんです。本日はそんな竹林さんに仕事のスタンスやM&Aの裏話などいろいろと伺っていきたいと思います。

竹林 史貴さん(以下、竹林):よろしくお願いいたします!

YAZAWA:まず初めに事業内容をご説明いただけますか?

竹林:株式会社LOBという会社で、現在は楽天市場などのサービスの広告配信システムの開発を行っています。売却後は楽天に関する開発に特化していまして、ホームページに記載がある広告代理店事業やマーケティング支援事業は現在ほとんど行っていません。

YAZAWA:楽天と繋がるまでの経緯をお伺いしてもよいですか?

竹林:知人経由で楽天の方を紹介してもらったのが1番初めのきっかけです。その時に広告システムの刷新を考えているという相談がありまして。当時AmazonさんやZOZOTOWNさんも広告に注力し始めたタイミングでして、楽天もより効率的な広告配信システムを構築したいと考えていた時期でした。そこで、まずはプロデュースと受託開発という形でお手伝いさせていただくことになりました。

YAZAWA:当時の竹林さんの心境としてはいかがでしたか?

竹林:国内にまだこんなに大きな案件が残っていたのかというのが率直な感想でしたね。 前職が広告系の会社でして、そこで経験してきたプロダクトの事業規模って年間売上50~60億円くらいだったんです。楽天は当時で年間売上1,000億円を超えていて、更に3~4年後にはそれを2倍に伸ばしたいと。このミッションには燃えましたね。 しかも、システム開発にこれまでの自分自身の知見がかなり活かせそうだったので、是非一緒にやりたいと思いました。

YAZAWA:創業してからどのくらいのタイミングだったんですか?

竹林:楽天の案件を始めたのは創業してから1年半過ぎですかね。

YAZAWA:すごく早いタイミングですね。

竹林:そうですね。社員も数名規模で僕自身も身軽に動いていた頃でしたね。

売却のきっかけ。失敗の悔しさをバネに挑んだ新たなチャレンジ。

YAZAWA:売却を決断されたご理由など教えていただけますか?

竹林:広告マンとしてこれ以上にない魅力的な規模とミッションだったのが1番の決め手です。
あとは割と自然な流れですね。当時は案件が大きすぎてリソース的に楽天の仕事しか出来なくなっていました。このためにエンジニアも採用拡大して、僕自身もプロデューサーとしてSlackのチャンネルに入って常にコミュニケーションをとったり、頻繁にオンライン会議をしたり、既に中の人間のような動きをしていましたね。
その辺りから売却も視野に入れるようになりました。売却が正式に決まるまでは、世の中へのプロダクト化も加味して汎用性を意識するようにはしていましたが。

YAZAWA:自然な流れとは凄いですね。本来であれば買ってくれるところを探すのに労力がかかりますが、これまでの仕事内容が評価されていたためスムーズにお話が進んだんですね。

竹林:実は、ここに至るまでプロダクトを作っては潰してっていうことを何度も繰り返していたんです。前職で子会社の代表を任せてもらったりしていたので、自分はプロダクト作りには自信があったんですけど、何度やっても上手く伸びそうにない。そういったタイミングで広告という自分の得意領域でのビッグオファーだったので、絶対にこのチャンスを逃したくないという想いはありました。自信のなさや悔しさをバネにしたチャレンジだったからこそ、よい結果に繋がったのかもしれません。

YAZAWA:過去の悔しさをバネに結果を出せるのが流石です。
突っ込んだ質問なのですが、ズバリ売却して良かったですか?

竹林:後悔は1ミリもないですね。良かったと断言できます。 さっきの話戻るんですけど、プロダクト開発への自信を失って、そこから自分の強みを再度整理してみたんです。自分の強みはやっぱり広告だなと思っていたタイミングで、こんなに大きなフィールドで勝負させてもらえる。これでいくしかないと思いました。

また、自分が金銭を得たことでスタートアップエコノミーに還元することができるようになったのも大きなメリットです。彼らから学ぶことがとても多いのと、同じようなステージにいる人たちとのコミュニティも広がっていくので、自分1人で仕事をやっていた時と視点も成長スピードも大きく変わりました。刺激を受ける機会が非常に増えたので、今後のビジネスを展開していく上での大きな財産になったと思います。
まぁ結果的にどう転んでも後悔はしなかったと思いますが、今はすごくいい状態ですね。

英語公用化の楽天。全社員TOEIC800点以上を目指す。

YAZAWA:楽天は採用基準の1つに英語が喋れることが挙げられますよね。 これは御社にも求められるんですか?

竹林:猶予期間は設けられていますが、英語は求められますね。 楽天は新卒採用ならTOEIC800点以上、中途採用ならTOEIC600点以上の基準が設けられていて、中途採用でも出世コースを目指すなら一定期間内に800点を超えることが求められます。

YAZAWA:猶予期間はどのくらいなんですか?

竹林:当社は3年ですね。一応社員の6割近くは800点を超えたので、皆よく頑張っています。

YAZAWA:皆さん独学で勉強されたんですか?

竹林:一定以上の成績になるまでは独学でやってもらいました。ダイエットや禁煙と一緒でかなり根気がいるので、本人にやる気がないと難しいなと。その後800点に近い人から順に会社からサポートという形で勉強の機会を提供しました。 役職者も含めて毎日3時間くらい勉強するのを3か月ほど続けましたね。

YAZAWA:仕事をしながら勉強も続けるのは本当に立派ですね。

竹林:楽天の広告部署って海外ではアメリカ、シンガポール、インドなどにあるんです。 特にインフラなどの共通機能系は世界とコミュニケーションをとる場面が多いので、英語が使えないと実務に大きな支障が出てしまうんですよね。

ここだけで教える、会社売却後のお金の使い道。

YAZAWA:会社を売却すると結構まとまったお金が入るんじゃないかなと思うんですけど、その辺りいかがでしょうか…?!

竹林:通帳を見て「うわぁー!やったー!!」とはなりましたよね。普段から入った分全部使う人なので、初めて見る桁数で。すぐ証券の人から電話と直筆の手紙がきましたよ(笑)

YAZAWA:その後何を買われたんですか?

竹林:いろいろ買いましたよ。家や車を買ったり、親のローンを払ったり。ゴルフも始めました。M&A直後に「1日で100万円使ってやる」と意気込んでハイブランドなセレクトショップに洋服を買いに行ったんですけど、100万円なんて全然買えなくて。浪費の限界にチャレンジしましたね。
M&Aをした起業家ってYouTubeとかでお金について語りがちですが、そういう発信になってません?大丈夫ですか?(笑)

URUSHI:こちらからご質問しているので大丈夫ですよ(笑)
起業家の露出する人って限られてるので、やっぱりイメージが偏りがちですよね。

竹林:起業家っていうと、何か「急成長」とか「イケてるサービスを作る」とか「エクイティファイナンスをする」とかそういうことが当たり前のように第一想起されると思うんです。
でも、明治時代とか昔って町中が起業家で溢れてたんですよ。呉服屋やだんご屋をやっている人だって起業家だった訳で。大企業が人を雇うようになったのって戦後のごく最近の話。 そう考えると、よくイメージされる起業家って実は偏っているんじゃないかなと思います。普通に商売を営んでいる方も本質的には起業家だし、もっといろんな解釈をしないと起業家が増えないですよね。

URUSHI:起業というものの解釈を広げていきたいですね。起業家もいろんなバラエティー差があるんだよっていうのをこの番組でも伝えていきたいです。

竹林:イケてないと起業家じゃないかって言われたら全然そんなことないですしね。代理店や商社で働いてきて、そのビジネス規模を小さくして独立しても別に起業じゃないですか。 そういうのがもっと増えてほしいですね。そのほうが皆さん時間もお金も余裕が出来るんじゃないかな。

仕事のモチベーション。本質的なやりたい仕事とは。

YAZAWA:会社売却後の仕事のモチベーションは変わりましたか?

竹林:そこは大きく変わりましたね。ご飯を食べるため、つまり生きるために働くのではなく、シンプルに自分がやりたい仕事と向き合うようになりました。 仕事をする上での第一の目的は生きるためにお金を稼ぐことなので、給料や働く場所、自分の能力に一致するかで多くの人は仕事を決定すると思うんですけど、実はその目的がなくなったら、仕事を探すのはめちゃくちゃ難しいんですよ。
あと、自分にとって「好きなこと」=「やりたいこと」ではないというのも最近徐々にわかってきました。好きなことであっても、マーケットとして斜陽産業であればビジネスとして成功させるのは難しいなと。あくまでこれは僕個人の価値観ですが。

URUSHI:なるほど。働く目的の部分が大きく変わったが故に、やりたいことの本質を考える必要が出てきたと。

竹林:そうなんです。何か好きなことといったら僕も音楽、ゴルフ、サーフィンとか趣味の領域になってくるんですが、果たしてそれを仕事にしてよいのか。好きなことを仕事にしてサーフショップをやるのも素敵なライフスタイルではある。でも、今M&A をしてビジネスマンとして脂が乗っていて、スタートアップの人脈もすごく増えている中でそれでいいのか。 自分の心の声を聞いてみると、それでは満足しないなという結論が出ました。それならもっとやらなきゃダメですね。改めて今の自分の心の声に忠実に、もっと高い目標を追い求めていきたいと思います。

YAZAWA:自分の心の声は大事ですね。起業の形と一緒で仕事のモチベーションも人それぞれですが、自分が今やりたいことは何かを見つめ直すことは必要ですよね。
竹林さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

「STARTUPS SELECTION® TOKYO」第9回目放送
YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9fq2zilDYx8

ゲスト
■竹林 史貴(たけばやし ふみたか)
株式会社LOB 代表取締役社長。
2010年サイバーエージェントに新卒入社。広告代理店営業に配属。 スマートフォンアドネットワークの立ち上げや、広告メディアの販売組織の立ち上げを経験した後、株式会社AMoAdの代表取締役に就任。2015年に独立し、2016年にLOBを創業。2018年に楽天株式会社に売却。

パーソナリティ
■YAZAWA(やざわ)
元・株式会社nene 代表取締役。2018年にネット秘書サービス「nene」を創業後、2020年に事業を売却。株式会社Wizが子会社化。代表取締役としてサービス拡大に従事したのち、自身の会社で新しい事業の立ち上げを行う。

■URUSHI(うるし)
株式会社OKPR 代表取締役。2016年に「OKPR」を創業後、2020年にM&Aにて株式会社VOYAGE GROUP(CARTA HOLDINGS)入りする。情報経営イノベーション専門職大学の客員教員や、東京都やEY新日本監査法人が主催するプログラムにおいてメンターも務める。課外活動として「サムライ広報会」も主宰中。

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