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レポート

「明確なビジョンがある人は成功する」Amazonの秘密を知ろう

2020.05.01

Information
Startup GRIND TOKYO オンラインイベント
2020.4.20

2020年4月20日(月)、Startup GRIND TOKYO主催の初のオンラインイベントが開催された。この日のゲストはアマゾンウェブサービスジャパン株式会社スタートアップ事業開発部本部長の畑浩史さん。事業内容や畑氏自身のキャリアや今後企業する方へのアドバイスなど、有益な情報が盛りだくさんのイベントである。

インタビュアーはStartup GRIND TOKYOの宇敷珠美さん。初のオンラインイベントはYouTubeライブでの配信となった。モニターには宇敷さんと畑さんの画面が二分割にして映し出された。新型コロナウイルスにより外出自粛を要請される中、自宅で視聴できるサービスはありがたい。

スタートアップのために他の起業と協業することも

宇敷珠美さん(以下、宇敷):みなさんこんばんは。今回は初めてオンラインでイベントをさせていただきます。第一回目のゲストはアマゾンウェブサービスジャパン(以下、AWS)事業開発部本部長の畑浩史さんに来ていただきました。

畑浩史さん(以下、畑):よろしくお願いします。

宇敷:アマゾンと言ってもいろいろと部門があると思います。畑さんの部署ではどんな仕事をされているのか簡単に教えてください。

畑:AWSでは主にBtoB向けのクラウドサービスを提供しています。ウェブサービスやアプリなど、いわゆるITサービスでは何かしらのサーバーやデータベース、機械学習などのサービスがあるのですが、そのようなものをアマゾンがクラウドサービスとして展開しています。私のいるスタートアップ事業開発室ではスタートアップされるみなさんにAWSを使っていただくためにせきる支援策を提案する部署となっています。数は公開していませんが、非常に多くのお客様に利用していただいています。例えば、日本国内だけでなく、アメリカのシリコンバレーや、エアビーアンドビー、Netflixのような既に大手の企業から、まだできたばかりのスタートアップの企業まで多くのお客様にご利用いただいています。

宇敷:その中で畑さんはどのようなお仕事をされているんですか?

畑:いくつかあるのですが、スタートアップがAWSを使うのに必要なプログラム、例えばまだシード/アーリーステージのスタートアップの人向けに無料のクーポンやクレジットのようなものを提供するようなプログラム。他にも、なかなかスタートアップの時間がない中でサービスやアプリを作っていく段階の人たちに、技術支援のような形でアーキテクチャや機械学習のアドバイスをしています。それ以外にもスタートアップのエンジニア向けのコミュニティの支援やイベント、勉強会なども開催しています。スタートアップからダイレクトで支援するケースもあれば、スタートアップのコミュニティのベンチャーキャピタルの方やアクセラレータの方と協業することもあります。

宇敷:畑さんは所属してからどのくらい経ちますか?

畑:僕がAWSに入ったのが2013年9月で、そこからスタートアップ支援チームの起ち上げからいるので、もう7年目になりますね。

宇敷:アマゾンはウェブサービス部門以外にもプライムビデオ部門や配送部門など、いろんな部門があると思うのですが、他の部門とのかかわりはあるのですか?

畑:AWSのスタートアップ開発部はスタートアップのためになることなら極力支援するので、例えばスタートアップからアマゾンジャパンと協業することがあれば繋ぐこともあります。去年は荷物預かりサービスを行っているecboさんからお話をいただき、アマゾンハブというアマゾンの荷物を受け取れる仕組みを大手コンビニさんや鉄道会社さんと一緒の形でecboさんもそのパートナーとして発表されたました。AWSのユーザーさんということで、アマゾングループで何かビジネスをやることで繋がったこともあります。

宇敷:畑さんの所属するスタートアップ事業部のクライアントの方々はどのフェーズの人が多いのでしょうか?

畑:起業して間もない、もしかしたら登記もしていないぐらいの事業者から新規上場してすぐの企業まで、幅広く使っていただいています。

「常に初日だと思え」というポリシーがある

宇敷:スタートアップ事業という名前がついていると、個人的に敷居が高いイメージがあるのですが、どのような雰囲気ですか?

畑:アマゾンとAWSそのものにスタートアップカルチャーというものがずっとあります。もともとアマゾンもジェフ・ベゾスが起ち上げた会社ですし、その中でもAWSも一つの事業として起ち上がったということもあり、自分たち自身がスタートアップだというところもあります。ジェフ・ベゾスが言っている企業ポリシーが「still Day One」といって、常に初日だと思えという意味です。僕らもそう思ってビジネスに取り組んでいるので、そういう意味でもスタートアップのお客様との親和性も高いのかなと思います。

宇敷:企業向けだけでなく、私たちにも使えるようなサービスはありますか?

畑:今はWEB会議に使えるサービスがいろいろありますが、実はアマゾンにも「Amazon Chime」というリモートのサービスがあります。また、「Amazon WorkSpaces」というリモートデスクトップのようなものもあります。ブラウザ上で仮想ウィンドウズのような形です。会社があらかじめ用意したような環境をブラウザ上で動かせるサービスです。自宅のパソコンのスペックがそんなに高くない、もしくはデータをご自宅に置いておくと会社としてもセキュリティ上不安というときにブラウザからログインして使います。ただ、一般の方がすぐ使うというより、会社のIT部門がセットアップして社員が使う形です。

宇敷:今、新型コロナウイルスの影響でリモート作業をされている方も多いと思いますが、畑さんもリモートできているんですか?

畑:はい。お客様や社内でのミーティングも全てリモートワークできています。ただ、スタートアップの支援事業というものは実際にリアルでお会いして進めていくことが重要なので、今現在は試行錯誤の状態です。

宇敷:オンラインだと伝わりにくい部分もありますよね。

畑:あとはチームのコミュニケーション。リアルで会えないとコミュニケーション不足に陥りがちなので、ミーティングの回数を増やしたり、今流行っているオンライン飲み会をしたり。意識的にやらないとダメだと思っています。ほかにも、ワン・オン・ワンの回数を増やしたり、あとは特にミーティングのトピックやアジェンダを決めずに集まって雑談をしたり、というのを1時間ほどやっています。

畑さんの紆余曲折のキャリア

宇敷:畑さん自身も起業した経験があり、ユニークなキャリアをお持ちだとうかがっているのですが、Amazonに入社するまでの経緯を教えてください。

畑:新卒で日本IBMにシステムエンジニアとして入社しました。通信会社さんを顧客にしていたのですが、IBMの中でも一番大きな汎用機であるメインフレームのシステムエンジニアをやっていました。だから、基幹システムなので、なかなか止めることができないんです。商用システムを止めるのはお盆と年末年始の2回で、大晦日に入って正月にメンテナンスしたり、新しい機器を入れる作業をしたりで、基本休みがないんです。それで、「SE向いてないな」と思いはじめて。本当にエンジニアを突き詰めるタイプの人はもっと優れた人がいます。でも僕はもうちょっと人と関わるほうが好きかなと思い、途中でIBMの中でコンサルやテクニカルセールスのSEにキャリアチェンジしました。そこでコンサルをやっていたときに仲が良かったメンバーがいて、そのときのメンバーが辞めてベンチャーを起業するというのでノリで「僕もやります」と決めました。

宇敷:それはどんな会社だったんですか?

畑:ヘルスケアのスタートアップで、町の診療所やクリニックの予約システムを開発、販売する会社でした。当時はみんなで起業して僕は既にセールスや事業開発、マーケティングなどバックオフィスでないところを、もうひとりのメンバーとやっていました。ただ、起業した2006年はライブドアショックと村上ファンド事件が起き、なかなかマザーズにも簡単に上場できない時代に突入したんです。当時もベンチャーキャピタルから出資をしてもらってIPOを目指して業績は伸びてはいたものの、IPOするまではいききりませんでした。最後のほうはかなりビジネスが厳しくなってきました。キャッシュフローでヒリヒリするような感じで、医療業界をどう攻略していくか、セールス・マーケティングの事業開発のところでできることはないかあらゆる手を尽くしました。この経験で得たことを一つ挙げるとするとキャッシュの重要さです。そこを本当に意識してやらないと当たり前ですが会社は潰れてしまいます。それは自分の肌感覚として刺さったことです。そして、その会社は今ヘルスケアの上場企業である「エムスリー」という会社の子会社として残っています。

宇敷:その経験が痛かったので、もう起業しなかったんですか?

畑:実は2008年に辞めたあとにもう一度起業したいと思ったんです。起業で学んだことはキャッシュの重要さですが、IBMを辞めていちサラリーマンからスタートアップの創業メンバーとしてやっていく中で経営陣ではあったものの経営としては素人だなと実感していました。反面、サラリーマンでは味わえない面白さもあってそこで学んだことも多かったので、もう一度やりたいなと思ったものの、こんなに経営に素人だった自分がトライ・アンド・エラーでもう一度やるのもどうかなと思ったんです。そこで、まともな経営者のもとでちゃんと経営を学びたいと思い、勉強よりも実践したいタイプなので、ベンチャーを辞めた後は失業保険で食いつなぎながらフリーでコンサルの仕事を受けたり、知り合いの仕事を手伝ったりとフラフラしていました。その後「ミスミ」という機械工業系の会社とご縁がありました。当時、ECの新規事業を立ち上げる話があり、そこで新規事業の起ち上げを行いました。

宇敷:そこで新規事業の責任者をされていたんですか?

畑:新規事業のマーケティングと事業開発に近いような形を当時の執行役員の下で一緒に見ていました。事業自体がゼロから始めたものなので、マーケティングプロモーションを考えたり、いかに売上を上げていくか、当時の会長の三枝さんの厳しい指導のもと取り組んでいました。このときが36歳くらいで、そこには3年ほど勤めました。

宇敷:そこからアマゾンへ入社したのですか?

畑:そうですね。そこのEC事業が機械工業系だったのでITに戻りたいという気持ちがあり、2013年に一旦ミスミをやめて半年くらいフラフラしていた中で、当時のITを調べているとクラウド系が伸びていると知りました。スタートアップもやりたいなと思っていたのですが、過去にスタートアップをやったからこそ半端な気持ちでいくと自分自身にも良くないと思いがありました。それでなかなか踏み切れなかったところ、AWSがすごいことになっていると聞きまして。もともとIBMの新卒の同期がAWSで楽しそうに仕事をしていたんです。おもしろいことに新卒の同期がIMNをやめていろんな仕事をして、また同じ会社で働くという。たまたまスタートアップのポジションがあいていたので、支援側で見るのもいいなと思っていたら、気づいたらもう7年目です。

創業者のビジョンが文明化され定着させる仕組みがある

宇敷:アマゾンに入って驚いたことはありますか?

畑:アマゾンはアメリカの本社のAmazonからAWSから、アマゾンジャパン、AWSジャパンと全世界に相当の数の社員がいます。そして社員はジェフ・ベゾスが考えたカルチャーが軸に通っているんです。アマゾンのミッションというところで「地球上に最もお客様を大切にする会社」と掲げています。ありがちな言葉ですが、非常に気持ちが良いというか働きやすいんです。ビジネスをしているといろんなところで悩むと思うんです。でも、この言葉は常にカスタマーのためになっているのかということを考える上で軸として通っています。判断に迷ったときや苦労しているときでもカスタマーのためだと思うと頑張りにブレがないんです。創業者が思い描くビジョンを文明化して定着させる仕組みはすごいし、それを体現して実行しているのは面白いと、この会社に入って気づきました。

宇敷:日本にまでミッションが徹底して定着しているやり方は何だとおもいますか?

畑:まず、会社がどこを目指しているかを創業者ならびに経営陣がわかっているのは簡単なようで難しいと思うんです。「その会社が何のために存在しているのか」はぼやっとしていて人に伝わっていない可能性もあります。それを明文化することですよね。ビジョンとして「地球上に最もお客様を大切にする会社」というものがあり、行動規範として「リーダーシッププリンシプル」というものがあるんです。顧客にとにかく執着して考えていこう、結果を出そうというような大事なミッションがあります。今で言う起業カルチャーのようなものをジェフ・ベゾスは創業のときから作っていて、今でもその時時で改善を繰り返し、当時から残っているもの、新しく追加、修正されたものとして残っているんです。次に大事なことは定着化するための仕組みです。例えば採用のときにリーダーシッププリンシプルを満たしているかを見るとか、社内のミーティングでも頻繁に行われるんです。そこをちゃんとマネージャーも含めて評価するとか、そういったことで散りばめたり、自分たちが行動する上で意識したりとして、ジェフ・ベゾスには会ったこともないんですけど僕にも染み付いています。ただ、この話をすると「畑さんがそんなに熱く語っていることが驚異ですよね」と言われるんですけど(笑)。

宇敷:アマゾンで働いて良かったと感じることはありますか?

畑:スタートアップ支援をやっているので、自分自身がスタートアップにいたこととスタートアップのお客さんがすごく好きなので、半分仕事、半分趣味みたいな感じでイベントにも毎晩行っているぐらい。今はオンラインでしか会えないのは残念です。いろんな起業家やスタートアップで働く人たちと話すこと事体も面白いです。

宇敷:今までにいろんな起業家の方とお会いしていると思いますが、うまくいく起業家の特徴はありますか?

畑:自分の経験や周りを見ていて思うのは、何を持って成功とするとは言いづらいのですが、うまくいっている人は明確なビジョンを持っています。次に、それを諦めないんです。最後に、そのビジョンを具体的に実行する力だと思います。

宇敷:なるほど。今後、畑さん自身また起業したい気持ちはありますか?

畑:なにかあれば起業したいなとは思っていますが「やるやる詐欺」になっています(笑)。一度やっているからもう一度してみたい気持ちもあるのですが。「これをやりたいんだ!」という強い意志がないと中途半端で終わってしまうと思います。

宇敷:今後のAWSやご自身の事業開発部の展開を教えてください。

畑:たくさんのお客様にお使いいただいているのですが、やることは常に地道にコツコツとスタートアップを一社ずつフォローしていくことは変わりません。スタートアップのお客様の特性として新しいお客様がどんどん増えていくし、今までのお客様もどんどん大きくなっていきます。地道にフォローしていくことは大前提。その中から、IPOして大きくなっていくスタートアップや世界に羽ばたくようなスタートアップの支援もできたらと思ってます。

■Startup GRIND TOKYO
http://startupgrind.tokyo/

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