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レポート

「withコロナ時代」の走り方〜CFOはどう振舞うべきか〜【GMOペパボ共催】

2020.05.07

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【GMOペパボ様共催】「withコロナ時代」の走り方〜CFOはどう振舞うべきか〜
オンラインイベントレポート

2020年4月21日(火)、株式会社ログラス主催のオンラインイベント「【GMOペパボ様共催】「withコロナ時代」の走り方〜CFOはどう振舞うべきか〜」がZOOM上で開催された。GMOインターネットグループのGMOペパボ株式会社はいち早くリモートワークを実施し、感染拡大予防対策をした企業のひとつである。今回はどのようにしてリモートワークを実現できたのか、GMOペパボ常務取締役CFOの五十島啓人さんが語ってくれた。モデレーターは株式会社ログラス代表取締役の布川友也さん。

1月26日の時点で既に対策に入った

布川友也さん(以下、布川):皆さんこんにちは。改めまして株式会社ログラスの布川と申します。本日はGMOペパボ様より常務取締役CFOの五十島様にご参加いただきまして、オンラインセミナーを開催していきたいと思います。コロナウイルス感染症の拡大という緊急事態に際して、他社にさきがけてGMOインターネットグループ様ではリモートワーク実施を決定されました。私自身も一度対策後のGMO様のオフィスにおうかがいしたことがあるのですが、入口にサーモグラフィーがあり体温が高い人は入れず、かつ手を消毒するまで、タッチパネルを触ることができないという徹底したオペレーションを実行されていました。当初は、やりすぎなのではないかという意見も一部あったと思いますが、結果的には企業として素晴らしい意思決定だったと評価されるものかと思います。今回は、GMOインターネットグループのGMOペパボ様より、コロナウイルス感染症が拡大する中で、どういった経営をされているのかについて、お話をお伺いしたいということでございます。皆さま本日はよろしくお願い致します。

五十島啓人さん(以下、五十島):よろしくお願いします。まずは弊社についてお話しようと思います。GMOペパボはGMOインターネットグループの会社です。我々は2003年に創業し、「もっとおもしろくできる」という企業理念のもとに様々なインターネットサービスを運営・提供しています。社員のことを「パートナー」と呼んでおり、働いているパートナー数は400人です。東京が本社で福岡と鹿児島に拠点があります。創業者の家入一真さんが始めたレンタルサーバー「ロリポップ!」などのホスティング事業を軸に当社は成長し、2004年にGMOインターネットグループの連結子会社になりました。そして、2008年にJASDAQに上場いたしまして、2019年に東証二部に市場変更を行いました。会社の規模感はこのような感じで、昨年12月期の実績で売上高が89億円、営業利益が7億円強となります。

ではさっそくGMOインターネットグループのコロナ対策についてご説明します。我々がいつからコロナを意識していたかというと、最初は1月16日です。この日が、武漢に渡航したことがあった男性から新型コロナウイルスが日本で初めて検出された日で、社内でも出張についてどう扱うべきかという話が出ました。社内で議論した結果、コロナ対策は、出張を制限した上で、全グループに注意喚起しましょうというところからスタートしました。この段階では、コロナウイルスについては少し注意した方がいいという程度の認識でした。

ここから約1週間経過した1月25日、コロナウイルスの脅威が想定以上だという話になってきました。社内で回ってきた武漢の病院に人が押し寄せている動画を見ましたが、当時の日本はまだそのような状況ではありませんでした。しかし、その頃から、社内でコロナウイルスの脅威が想像以上であるという認識が広がりました。

布川:社内で動画が共有されたというお話がありましたが、共有はグループウェア等でされるのでしょうか?

五十島:GMOインターネットグループ全体で使用しているチャットツールがありまして。そのチャンネルに各社の役員が入っているチャンネルがあり、そこで共有がありました。1月26日に社内でコロナウイルスについて会議をしていく中で、その時点では海外への渡航が制限されていないことと、日本で国内3人目の感染者が発見されたこと、武漢にて数千人単位で肺炎の疑いがあるということで、「これは危険である」という認識が社内でも取れました。この時点でリモートワークにしようと決断し、社外へ発表しました。

布川:1月26日の時点ですと、リモートワークをやっている会社はほぼなかったと思いますが、貴社の熊谷代表が意思決定されたのでしょうか?

五十島:各社の役員が集まって話しあって決めましたが、前日も会議をしていたので熊谷代表もリモートワークを意識していたと思います。

東日本大震災以降、訓練をしていたことからすぐ切り替えられた

布川:素晴らしい意思決定力ですね。今日のセミナーにいらっしゃっている方はCFOの方がとても多いので、リモートワークの決定に伴う財務的インパクトが気になるところだと思います。そこにどう折り合いをつけて社内で意思決定されたのかご教示頂けますでしょうか。

五十島:リモートワークにしようという意思決定は、財務インパクトの計算より先に行いました。限られた時間の中で情報を集めて意思決定をする必要に迫られていたため、コロナが想定以上に危険であるという情報が集まったタイミングで意思決定しました。財務数字がどうなるかはその後に分析していこうという感じで、まずは一旦リモートワークに切り替えることを決めました。

布川:コロナウイルス対策の意思決定が遅れて未だにリモートワークができていない企業もあるぐらいだと思うのですが、それだけ速い意思決定ができるのは、貴社に何か強みがあるのでしょうか?

五十島:我々は2011年の東日本大震災以降、毎年BCP(事業継続計画)の訓練をしてきました。毎年5月中旬に基本的には全員出社せず、家で仕事をしましょうという日を設けています。こうした備えがあったため、容易にリモートワークへ切り替えられたという点が挙げられると思います。インターネット業界である生き残っている会社はやはり経営者、トップのリーダシップが重要であると思います。

布川:なるほど。普段から経営陣と従業員が緊急事態に備えてきたことが強みになっているということですね。

五十島:その通りですね。コロナウイルスの会社へ与える影響については、いくつかのテーマにそって検討しております。大きく5つで、「リスク判定」、「出社・オフィス」、「リモートワーク」、「定量分析」、「アフターコロナその他」の5分類での検討が社内ではスタートしています。「アフターコロナその他」はある程度収まってから振り返ってみて、そこから生かしていこうという話ではありますが、現状4つに関しては動いています。

まず「リスク判定」に関しましては、BCPの一環としてパンデミックが発生する可能性がある場合、どのようにリスク判定するかを決めました。「出社・オフィス」については、コロナ環境下において出社そのものをどうするのかという部分と、出社時においての安全性の高い職場環境をどう整備するのかというポイント。「リモートワーク」は、リモートワークファシリティについて検討しました。定量分析のほうでは、財務諸表への影響や、パートナー向けにアンケートを行ったりと、後者についてはかなり大々的に実施しました。

布川:ちなみに、1月25日時点でいくと、日本ではまだ、パンデミックの様相は呈していなかったと思います。社内のコロナ対策の規定もしっかりと整備されているように思いますが、元々感染症の対策マニュアルが作成されていたのでしょうか。

五十島:1月26日以降1ヶ月以内にBCPマニュアルをコロナ禍に合わせてアップデートし、以後はこういう形でやっていこうと決めました。

布川:リモートワークになったタイミングでリスク判定の基準や対策マニュアルを徐々に積み上げていったイメージですね。

五十島:そうですね。出社に関してはそもそも電車なのか徒歩なのかを確認し、時差通勤や空いているルートへの変更なども検討しました。やむなく出社するパートナーに向けては、手厚い感染症対策をしっかり準備しています。実は、GMOインターネットグループでは、入社時にヘルメットが貸し出されていて、年に1〜2回ある避難訓練の際に使用しています。今はコロナ影響下において、ゴーグルやビニール手袋、サージカルマスクが支給されています。
あとは、来客等への対応として、最初に布川さんがお話されたように、エレベーターのボタンにはビニールテープが貼ってあり、第二関節でボタンを押すようにと書いております。あとはフロアに入るときも体温計で体温を計ってから入室が許可されます。

布川:素晴らしいですね。まさに完璧な対策と言えそうです。

五十島:このような形で出社するパートナーや来客対応等の各種対策を行いました。あとは、先ほど申し上げた通り、リモートワークに関して、グループで4000人ほどいるパートナー向けにアンケートを実施しました。その中では、自宅の作業環境を整備する中で、机や椅子の購入、冬だったので暖房器具の光熱費の増加が苦しいという声が多かったです。特に要望が多かったのは、通信環境整備とその費用負担で、課題を解決すべくオフィスコスト還元プログラムと称して、通信環境整備の支援の実施を決めました。

布川:他社にも共通する課題としては、メンバーのモチベーション担保や作業効率性の維持、従業員の精神面のメンタルケアなども出てくると思うのですが、何か具体的に対策は行っていますか?

五十島:確かに、若手の一人暮らしの人からは「孤独を感じる」というコメントが結構あります。仕事とプライベートの境目がつかないところがあるので、ここに関しては例えば毎日30分だけチームで無駄話する時間をもうけるとか、仕事を抜きにした精神的なクッションを作るような形をそれぞれの状況を鑑みて対応しています。
 また、1月27日からは一日2回、安否確認のアプリでプッシュ通知を送っています。訊く内容は主に体温と臭覚や嗅覚に異常はないか、ということを選択してもらっています。
 CFOや経営企画の方に関係ありそうな対策として、例年は休日に実施する株主総会を平日開催に変更しました。休日の方が多くの方にご来場頂けることが分かってはいるのですが、今年は密集を避ける目的で平日開催と致し、インターネットでのライブ配信等も行い、可能な限りの活用をお願いしました。株主総会に実際に来られた方もソーシャルディスタンスを取り、席を2mずつ開けました。弊社の運営事務局も過去最少人数の8名で運営を行いました。

布川:8名だけで運営をやりきったというのは驚きですね。通常は15名程度スタッフを動員するイメージがありました。では、ここで一旦Q&Aの時間を取りたいと思います。

「テレワークを続けたいという方と、出社したいという方の割合はどんな感じでしょうか?」というご質問を頂きました。

五十島:最初の一週間、二週間は「採用面談もあるので出たいです」という雰囲気が強かったです。その頃はまだ、リモートワークがどこかで終わるのだろうという雰囲気が社内でもあったのですが、直近になって「リモートワークはしばらく続くね」という雰囲気に変わってきました。言い方は悪いのですがある意味みんな諦めているといいますか、この環境下でやっていかざるを得ないという心境になっているのかなという感じです。例えばコロナが完全に収束しますとなったら、おそらく大抵の人は出社したいと言うのでしょう。しかし、そこからの働き方として毎日の出社を望むのか、完全在宅を選ぶのかでいくと、中間の自由に働きたいという人が結構増えるのではないかという気もしています。

布川:確かにそうですね。アフターコロナの世界がどうなるかという極めて難しい局面にさしかかっており、各社の経営判断が強く求められていると思います。

CFOと経営者のズレが出ないよう日頃からコミュニケーションを

五十島:コロナ環境下においてCFOはどう振舞うべきか、というのが今回のテーマだと思うのですが、これを私なりに考えてきました。例えば管理部門の場合、各々の役割として大きく「マネジメント」や「実務」があり、分野として「HR/広報」、「総務」、「経営企画」/IR」、「経理/財務」、「法務」があるとします。その中で「マネジメント」の上位の役割を担い、分野として「経営企画」/IR」、「経理/財務」を守備範囲とするのが一般の人がイメージするCFOだと思います。大企業のCFOはこのタイプが多いと思います。ただ、ベンチャー企業の場合はちょっと違うのかなと。ベンチャー企業のCFOの守備範囲は、二つタイプがあるのかなと思っていて、ひとつは数字周り全部型、基本的に数字に近いものは全部担当するタイプ。今の時期であれば資金調達等で会社を支えるタイプのCFOですね。

もう1つは、何でもマネジメント型。ベンチャーの管理部門の大半の分野にて、「実務」以外を全部マネジメントして、会社を支えるタイプのCFOです。各社ごとにコロナウイルスによるビジネスへの影響は異なるので、企業ごとにCFOに求められる役割をこれらのタイプの中で柔軟に変化させていく必要があると思います。

実は緊急対応とは、こういう環境下だけで行うものでもないと思うのです。基本的に発生しうるインシデントにおいてまずは経営者と目線を合わせ、外部関係、内部関係の情報収集をして今後の見通しを見積もり、自社への影響分析をして対策検討を行った上で経営者の方と協議し、責任者として対策の遂行をするのが、CFOの役割だと思っています。自らの専門分野を担いつつ、同時に他分野の進捗状況のモニタリングを行っていく必要もあります。また、CFOにはいかに早く情報収集から対策検討まで行えるかといったスピード感も求められます。そして一番重要なのが経営者との目線合わせです。CFO自身が考える正しさと経営者の考える正しさがずれてしまったとき、検討しないといけない事項や対策案の手戻りが増えてしまうので、ここを普段からしっかりと合わせておくことが必要です。

このようにCFOが機能するためには、まずは経営者との日常でのコミュニケーション、基本的には定例ミーティングを持ち、目線を合わせていくのがいいように思います。また、情報収集から対応策の策定、実行までをスピード感を持ち対応するには、変化に強い人材の採用、多様性を活かした人材の育成も必要です。こういう環境下だと何が正しいのかよくわからない状態になるので、いろんな意見を持っている人がチームにいるのが強みになっていると思います。どう多様性を活かすか、ですよね。最後に、対応策を実行するためには、責任感、適宜計画等を見直せる柔軟性、きつい環境下で頑張ってくれる周りへの感謝といったCFO自身の人間力も求められるように感じています。自戒を込めてですが。

布川:五十島さん本日は貴重なお話ありがとうございました。

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