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レポート

AI導入を成功に導くカギとは? AI事業で活躍する3名が討論

2020.05.15

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AI導入成功の条件
オンラインイベントレポート

新型コロナウイルス感染症への対策により、ビジネスではデジタルトランスフォーメーションの必要に直面している。その取り組みとして、AIの導入による業務の効率化やデータサイエンスが挙げられるが、一方で具体的な見通しが立たず導入をためらう企業も多い。

企業のAI導入を実現させるために、サービス提供側にはどのようなアプローチが必要なのか。本ウェビナーではAIを活用した事業を展開する3名による討論を行なった。

AI導入の成功に欠かせない条件とは

登壇者は、エステートテクノロジー株式会社代表取締役CEO澤博史氏、Sansan株式会社取締役/CISO/DSOCセンター長常樂諭氏、株式会社シナモン代表取締役社長CEO平野未来氏。

企業のAI導入を実現させる条件は、サービスの方向性を明確にして数値による具体的な成果予想を示すことのようだ。まず3社は、次のようなサービスを用意している。

澤氏:現在展開している不動産の事業では、利便性や治安の良さ、価格、耐災害性といった物件への多様な顧客ニーズに基づいてAIがデータ解析し、物件を提案します。現在はさらに、その情報を日・英・中の3カ国の言語で提供できるように試みています。

常樂氏:弊社では、法人向けクラウド名刺管理サービスSansanと個人向け名刺アプリEightを提供しています。クラウド上で名刺データを管理することで、相手との接点の履歴を共有し、キーマンを把握することができるほか、オンラインでも名刺交換を行なうことができます。すでにEightではQRコードを使った名刺交換が可能ですが、Sansanでも6月を目処にオンライン名刺を実装予定で、開発を進めています。

平野氏:弊社では、企業のもつ非構造データをAIによって分類・整理し、そこから業務の効率化を図るサービスを展開しています。営業通話で例えるなら、内容をテキスト化・分類し、好成績の営業マンの対応データを蓄積します。最終的には、その内容に基づいた顧客対応を担当者へリコメンドするというような具合です。

そしてクライアントとのやりとりのなかで、KPI(重要業績評価指標)やROI(投資利益率)の具体的な数値を用いた見通しはもちろん、その先の目標まで設定することが重要だという。

常樂氏:法人向けのSansanについては、クライアントの事業目的や導入後のKPI、さらには社員が名刺をデータ化し活用することを習慣化させる、ということにポイントを置いています。そのため、導入支援や活用レクチャーを行なうカスタマーサクセスの組織強化には注力をしています。導入によって会社の経営課題がどこまでクリアされるかを上手く紐付けることは難しいものの、それがSansanを広く導入いただいている要因のひとつでもあります。

また、提供側にとっては、社会的信用が大きい企業との提携を増やし、自社サービスのブランディングを高めることも重要だ。

澤氏:最近はCVC・VC(企業投資)がかなり増えてきているように、大企業がベンチャーに事業を依頼する事例が増えてきています。大企業と良い関係をつくるためには、担当者とうまく協力することも大切だと思います。新規事業などをミッションとしている担当者にとっては、ベンチャーと面白い新サービスを提供できれば、社内で認められ評価も高まることとなります。そうするとその担当者のモチベーションもあがり企業全体での採用にもつながっていくことになるかと思っております。結果として、担当の人、ベンチャーともにお互いにプラスになり得ます。そういったマインドのある人たちと手をとって一緒にビジネスを作り出すこと、つまり結局は、人と人とのつながりが大事なんじゃないかって思います。

常樂氏:導入によってクライアントが抱える課題を解決し、ビジネスを加速させる後押しをしたいと思っています。そうした成功事例が信頼やブランドを醸成していくと思うので、成功体験をつくることはかなりイメージしますね。

平野氏:弊社も、セキュリティ面でハイスペックなものが要求される金融機関や大手製造業でサービスを採用されてから、風向きが変わりました。金融機関でも使われているなら安心と、他の業界の方々に感じてもらえたのではないかと思います。

企業のAI導入を成功させるために必要な条件は、提供側と企業側との確かな紐帯と、信用度の高いブランディングの形成。そのためには相互関係の構築が欠かせないだろう。

AI導入におけるコスト問題にどう対応するか

クライアントとの長期的な関係構築のためにネックとなるのは、コストの問題。3社はその懸念をどう解消しているのだろうか。

澤氏:サービス実施にあたってPOC(概念実証)に取り組む際の主目的は、コスト削減と売上向上とに分かれると思います。前者は短期間で成果が見えやすいですが、後者は長期戦になる場合もあります。

常樂氏:弊社では、事前に具体的かつ段階的なゴールをクライアントとともに設けています。また、対応の可能性を広げられるよう、最初に複数の選択肢を用意して提案します。

平野氏:AI導入によってすべての企業で必ず効果が出るとは限りません。実装しても効果が得られなそうな場合は、POCの前にやらない方がいい旨をはっきりと伝える場合もあります。

提供側は具体的な数値を用い、ときにはシビアな内容までも含めて提案や意見をしていくことが大切なようだ。より現実的なAI導入のビジョンを企業側と共有することは、事業を成功に導く必須条件となるだろう。

コロナ禍は、AI導入の追い風となるか?

3社のクライアントには、緊急事態宣言の最中でもAI導入の発注を行なったり計画を前倒しに進めたり、前向きにビジネスを展開させている企業があるという。

澤氏:我々はいま、変革するタイミングの真っ只中にいるのだな、と感じています。この環境の変化によって世の中で活用されるものがどんどん変わっていくと思うんです。その変化を捉えられるかどうかが、これからも活躍できる企業を作るカギ。いまはピンチでありチャンスだから、次に何が出来るかを考えていくことで、日本社会が活性化してい糧になって欲しいと思っています。

常樂氏:社会の移動性が高まって、こうしてAIの時代となり、さらには新型コロナによって仕事でも私生活でも行動様式の大幅な変化が求められるようになりました。澤さんのおっしゃるように、ピンチをチャンスと捉え、これまでの働き方を見直したり、今後ビジネスシーンで必要なことは何かなどを考える機会としてみると良いでしょう。

平野氏:日本のAI活用は、世界と比べると遅れを取っています。だから、この状況をきっかけにして絶対に進めるべきだと思います。AIを活用するかどうかが今後、企業にとっては成長戦略のカギとなってくるはずです。

新サービスの導入やデータサイエンスの活用を検討している企業は、変革が求められるいまこそ、勇気を持って事業をすすめる必要があるだろう。そして3名の討論から結論づけられたのは、AI提供側は自社サービスを明確に定義することと、具体的なKPIをもってクライアントとの信頼関係を構築することの重要性であった。

登壇者プロフィール

澤 博史
エステートテクノロジーズ株式会社 代表取締役CEO。1991年、富士通株式会社に入社。その後、双日株式会社、CSK-ISを経て、2009年データセクション株式会社の代表取締役に就任。2014年12月24日東証マザーズ上場、2018年6月会長に就任。東京ビッグハウス株式会社、株式会社Macbeeplanet、トランザックス株式会社、株式会社ROBOT PAYMENT、アディッシュ株式会社の社外取締役を務め、現職に至る。

常樂 諭
Sansan株式会社 取締役/CISO/DSOCセンター長。2007年にSansan株式会社を共同創業し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」のプロダクト開発を統括。現在は名刺のデータ化やデータ活用の研究開発部門であるDSOCのセンター長を務めながら、CISOとして社内のセキュリティー施策を推進する。

平野 未来
シリアル・アントレプレナー。東京大学大学院修了。レコメンデーションエンジン、複雑ネットワーク、クラスタリング等の研究に従事。2005年、2006年にはIPA未踏ソフトウェア創造事業に2度採択された。在学中にネイキッドテクノロジーを創業。IOS/ANDROID/ガラケーでアプリを開発できるミドルウェアを開発・運営。2011年に同社をミクシィに売却。ST.GALLEN SYMPOSIUM LEADERS OF TOMORROW、FORBES JAPAN「起業家ランキング2020」BEST10、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019 イノベーティブ起業家賞、VEUVE CLICQUOT BUSINESS WOMAN AWARD 2019 NEW GENERATION AWARDなど、国内外の様々な賞を受賞。また、AWS SUMMIT 2019 基調講演、ミルケン・インスティテュートジャパン・シンポジウム、第45回日本・ASEAN経営者会議、ブルームバーグTHE YEAR AHEAD サミット2019などへ登壇。2020年より内閣官房IT戦略室本部員および内閣府税制調査会特別委員に就任。プライベートでは2児の母。

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