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レポート

新型コロナ渦中で、企業に求められる情報開示とは何か

2020.05.22

企業は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)による経営不振等の問題に、どう取り組むべきだろう。社員や顧客を守ること、社会的影響と向き合うことはもちろん、現在もっとも求められているのは、株主や社員、顧客、協働パートナーといったステークホルダー全体に対する説明責任である。

いま、企業が開示するべき5項目

2020年5月7日、『コロナ渦中において上場企業はどう開示したか』という題目のもと、シニフィアン株式会社の共同代表小林賢治・朝倉祐介・村上誠典らによるウェブセミナーが催された。まず小林賢治は、自社の紹介をかねてセミナーの冒頭を以下のようにはじめた。

小林賢治さん(以下、小林さん):シニフィアンは「未来世代に引き継ぐ産業創出のために」という使命のもとに、2017年に立ち上げました。Post-IPO(Post-Initial Public Offering:株式新規公開)のスタートアップ企業の上場をサポートする「産業金融事業」「経営アドバイザリー事業」「上場株投資事業」を行なっています。今回は、3・4月に決済発表をした数百の上場企業の説明資料をもとに、新型コロナの影響下におけるIR(情報提供)のトレンドやインサイトを話します。

小林さんによると、新型コロナの影響下で企業が開示すべき内容は、5つに大別できるという。

①事業への影響(定性+KPI
②業績影響への定量的説明
③Afterコロナの展望
④安全確保に向けた体制整備
⑤外部への支援活動

小林さん:新型コロナに関する情報説明のあった175社の内容を分類すると以上の5項目になります。新型コロナに触れない企業があったことには驚きましたが、停滞の度合いやKPI(重要業績評価指標)といった事業への影響の説明が78.3%(①)。具体的数値を用いた業績への影響の説明が16.6%(②)。Afterコロナにおける企業の展望の説明が4.8%(③)。従業員や顧客への安全確保の説明が48.6%(④)。外部への支援活動についての説明が10.9%(⑤)ありました。

事例をいくつか紹介すると、「テクノプロ・ホールディングス」と「前田工繊」は地域・事業ごとの影響度合いやそのベクトルに着眼した影響説明を、「ローソン」や「良品計画」は事業別前年比の客数・客単価や売上高といった具体的な数値をもって影響説明を行ないました。

「野村総合研究所」や「積水化学工業」は、新型コロナ影響下での現状やそれを前提にして導き出されうる仮定を提示したうえで、来期の業績予想まで開示していた好例でした。

「マネーフォワード」と「SHIFT」は社員が発症した場合の対応策に触れていましたし、「カーブスホールディングス」や「オムロン」はAfterコロナを見据えた実現性の高いビジョンを見立てていました。「アマゾン」や「丸井」は社内の人員や顧客にとどまらず、協働企業への対応までをも射程においた支援策を、相当な質量の文書で展開しています。

新型コロナ渦中の開示に求められる重要なポイントとは

小林さんは、新型コロナ禍中の情報開示の内容として、事業への影響、業績の現状、今後の見通し、安全面や支援策が求められるのはもちろんのこと、それらの詳細度が重要だという。各項目の開示において抑えておくべきポイントを以下のように語った。

小林さん:事業や業績への説明をする際にKPIの開示を徹底すると、売上やコスト面での固定費・変動費が見えるので、聞き手は利益の見通しや財務余力の想定をしやすくなります。現状不明な数値も、前提をしっかり置いたうえで開示して欲しいです。企業の対社会コミュニケーションの姿勢として第一に重要なのは、具体的な数字もって自社事業への考え方とインパクト分析とを示すことです。

第二に、持続可能な事業計画やコスト構造の見直しといったAfterコロナの展望を説明すること。現状分析に加えて、将来への備えや潮目の変化を捕らえる準備をバランスよく開示することが重要です。

そして第三に、社員や顧客、協働するパートナーといったステークホルダーをどう守り、助けていくかを説明する必要があります。自らの社会的存在意義を上手く伝えるためにも、ステークホルダーへの考え方と自社の事業との関連性をしっかりと固めることが重要だと思います。

以上、①事業や業績の影響説明に具体性をより持たせること、②現状を踏まえた明確なAfterコロナ計画をすること、③すべての関係者への対処・対応を明確に展開することが、情報開示における重要なポイントとなる。

投資家の求める理想の開示

小林さんは最後に、特に印象に残った業績予想と決済発表について述べた。

小林さん:航空会社の「ANA」と「JAL」でした。足下の状況をしっかり出すことで、逆に聞き手に濃い情報を与えたいい例です。かなり危機的状況であることも正直に話した反面、コスト削減や追加の資金調達を含めた対策で逆境を乗り越えようとする姿勢を強く示していました。単に不振を伝えるわけでもなく匙を投げているわけでもなく、対応の余地が少しでもある点は確実に押さえていこうという意思の感じられるいい開示だったと思います。

企業はいま、社会に向けて信用を得られるメッセージを送り届けることが求められている。まだまだ先の読めない新型コロナ渦中にあって、企業に必要とされているのは他でもない、意思伝達力なのではないだろうか。

 

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