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レポート

With/Afterコロナのマーケティングに必要な、ブランド×デジタルとは?

2020.06.30

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響により、今までの“当たり前”が多々瓦解するなかで、With/Afterコロナの生活・仕事に不安を抱く方も多いだろう。特にマーケティングの領域では、ラディカルな変化が予想される。 そんな時勢を受け、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会と株式会社サイバー・コミュニケーションズは共同で、『企業はブランド(本質)×デジタル(先進)で生き残れ Social good Branding』と題したマーケティングセミナーを開催した。講演者は、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会のアドバイザーであり、株式会社サイバー・コミュニケーションズのブランド・コンサルタント 山崎浩人さんだ。

世界規模の社会課題の再確認

山崎浩人さん(以下、山崎):マーケティングの話をする前に、まず現状の社会課題の確認をしましょう。直近の全世界共通の課題は新型コロナですが、それ以前の世界規模の課題を振り返ると、3つに大別できます。1つ目は経済格差です。2017年には、8人の大金持ちが世界の貧困の半分と同等の資産を持っているという、とんでもない経済格差が話題になりました。2つ目は紛争です。中東問題、アメリカと北朝鮮の問題、そして2020年の年初は、アメリカ・イランの戦争勃発を世界中が危惧していましたが、新型コロナで隠れてしまったという印象ですね。3つ目は環境問題です。グレタ・トゥーンベリさんがダボスでスピーチをして非常に話題になりました。ただ、新型コロナによる自粛は環境問題にプラス影響を与えており、ガンジス川すら水質改善されました。人間が本気になれば、環境問題は改善できる可能性を感じた出来事です。

これら世界全体の潮流を、私は「反グローバリズム」と呼んでいます。代表的な例はイギリスの欧州連合の離脱です。また、アメリカではグローバリズムが格差拡大の原因となり、1%の富裕層 VS 99%の貧困層と言われるような状態になっています。反グローバリズムの要素は、新自由主義に対する「反新自由主義」と、覇権主義に反対する「反覇権主義」(先進国が途上国を利用することへの反対)です。単なるナショナリズムではなく、「民族自決」×「他国協調」。自国の自立を前提とし、そこで足りないものは他国との協調で補い合っていくという考え方です。

また、貧困や飢餓、健康、福祉など17の世界共通の課題を掲げたSDGsにも注目が集まっていますし、個人的には、2019年にアメリカ経済団体の株主第一主義が廃止されたことも一大事でした。欧米型の経営が地域福利厚生に舵を切ったという意味で大転換だと思います。ただ、世界では近年SDGsが注目されていますし、日本には昔から松下幸之助の『企業は「社会の公器」である』という名言があり、企業の社会貢献という考え方が世界のスタンダードになりつつあるのかな、という印象を持っています。

それでは、日本の社会課題は?

山崎:次に日本の社会課題です。新型コロナの流行を受け、世界各国では国民に給付金を出したり金融緩和対策をとったりしたわけですが、日本は当初、お肉券や商品券を発案。国民の反対の声から最終的にはマスク2枚給付になりましたが、不備が多いのが現状です。全国民に向けた10万円の給付が滞る一方で、国会の方では不要不急と思われるような政策が進められています。特に検察庁法改正法案は、世論の声を受けて見送る方向に変わりましたね。

さて、新型コロナ以前から日本は「課題先進国」と称されていました。地震、エネルギー問題、災害、超高齢化社会、教育、食といった課題に対して日本がどう対応するのか、世界的に注目されていたのです。

日本の社会課題の現状をカテゴリー別に見ると、まず大きな食の問題を抱えています。自給率が非常に低く、添加物の認可数は1500品目とダントツの第1位。また、メディアではほとんど報じられませんが、日本はまだ原子力緊急事態宣言が解除されていない状態です。更に、種子法の廃止や水道の民営化、水源の海外売却、種苗法改正案など、食の安全を脅かす様々な出来事が実は日本で起こっています。

経済に関しては、20年間連続デフレは先進国で日本のみ。それから最低賃金も先進国最下位で、最低生存水準を下回る数字です。それから貧困層も増加しつつあり、子供の7人に1人、高齢者の5人に1人、単身女性の3人に1人が貧困という状態です。

政治・憲法に関しては、自民党は憲法改正をしようとしていますが、自民党の改憲草案には実は基本的人権が削除されています。モリカケ桜問題といった、税金の私物化や公文書の隠蔽・破棄も現在進行形の問題です。その他にも、日本には世界的なワースト1位がたくさんあり、実は課題が山積状態なのです。

Afterコロナはどんな社会になるのか?

山崎:では、Afterコロナはどんな社会になるのか? 皆さん一番気になるところだと思いますが、Afterコロナはそれ以前の社会の延長では、恐らくないでしょう。新型コロナによって、経済よりも命・健康・生活が優先されるとはっきり分かったと思います。働き方も変わるでしょう。これからは皆が一斉に出社しなくても良くなる、そして、都市集中型から地方分散型へ。そうなったときに、人間の知恵とコミュニケーション、ネットワークがより必要になると思います。

それから、食の自給、運搬、通信系インフラの重要度も高まるでしょう。地方分散型になると各エリアの自立が求められるので、国土の再計画も必要です。また、改めて言うまでもありませんが地球は有限なので、このまま先進国が途上国を消費するあり方は終わりを迎えるでしょう。そうなると、2000年頃から信用経済(金)が実体経済以上に膨張していますが、今後は自然資源や循環型生産物に基づいた経済になるのでは、と予想しています。

企業に関しては、知名度よりも信頼性、短期利益より長期持続利益、そして、むやみな規模・利益拡大よりビジネス規模の最適化が求められるでしょう。つまり、企業活動にも反グローバリズムの影響があるということです。

反グローバリズムを身近なところで言い換えると、「地元在住社会」とも言えるでしょう。人はあまり移動せず、集まりもしない。基本的に情報はネット・デジタルで知り、どうしても必要なものはリアルを使う。とはいえ、モノは必要ですから、各エリアの生産強化は必須となり、不足するものはエリア同士で交換するようになるはずです。そんな風に、社会の全体構想が大きく変わるなかで、各産業に適応が求められるでしょう。

Afterコロナでは、各人が人類・文明・社会の理想を根底に持ちながら、各ジャンルで状況に適応・自立することと、協調し合うことが重要になると思います。

世界と日本のブランディングの違い

山崎:社会課題を確認し、これからの社会を予想したところで、本題のマーケティングとブランディングの話をしていきましょう。ます、世界と日本のブランディング傾向は大きく違います。世界の企業ブランドランキングでは、1位がApple、2位がGoogle、3位がAmazonと、GAFAのうちの3社がトップを独占しています(Best Global Brands 2019 Rankings)。ちなみに、日本企業からは7位にトヨタ、21位にホンダがランクインしています。

アメリカではブランドを非常に重視しています。例えば、経営学者フィリップ・コトラーは、『のマーケティング 3.0』で「企業による人々の幸福への貢献を認識してもらうことで利益を得る仕組み」について言及していますし、『8つの成長戦略』では、大変な時代ほどブランドが重要だと説いています。また、実業家ジム・ステンゲルは『GROW』で「消費者ニーズより、人間にとって大切な基本的価値(喜びや結びつき)を感じさせることの重要性」や「高次のブランド理念は究極の成長エンジンである」と述べています。ブランディング事例として、Appleは1984年からCMで一貫して「Think Different」というメッセージを発し続けていますね。

そして、ユニリーバのCEOアラン・ヨーベは「パーパスをもつブランドのコミュニケーションは、単に人々にモノを買わせるだけではなく、いまの世界に対してアクションを起こすものである。(中略)パーパスを持ったブランドは、持っていないブランドよりも69%スピーディに成長した」と述べています。パーパスは日本では耳慣れない言葉ですが、海外では「企業の存在意義」としてよく用いられます。これは一例ですが、これから求められるブランド像として、Social Goodは当たり前になっていくでしょう。

一方、日本のブランディングとして同様にCMを挙げると、Social Goodの潮流とはちょっと違っています。日本のCMの傾向は面白コンテンツ系だったり、なぜか大勢で踊ったり、あるいは社名を連呼するような、企業の理念・価値よりも、認知向上を目的としたものが多いという印象を受けます。

なぜ、日本のブランディングは変われないのか?

山崎:日本のブランディングが変われない根深い背景に3つの要素があります。1つは高度経済成長の成功体験を忘れられないところ。モノ・情報が溢れる一方で人口や市場が減少していく現在において、やり方を変えなければうまくいかないのは歴然です。2つ目は、短期視点な経営です。IMDの発表では、日本の経営者の機敏性は63ヵ国中57位、データを扱う能力は59位と非常に厳しい評価をされています(World Competitiveness Yearbook)。一方で、労働者の質は世界4位と優秀ですから、人材を活かせていないという問題が浮き彫りになります。3つ目は、民度です。日本人はアメリカやイギリスに比べて芸能関連ニュースの関心が大変高い一方で、政治への関心は低いです。これは、日本の報道の自由度ランキングが急激に低下しているのも関係しているかもしれません。

日本の現状として、企業は社会貢献を軽視し、生活者・消費者も社会課題への認識が甘い。つまりは、負のスパイラルを起こしているように思います。また、民主主義の根幹である政治(国民の代理)と官僚(全体の奉仕者)、メディア(権力の監視)もそれぞれの使命を果たしておらず、この負のスパイラルを加速させている印象を受けます。そこ更に新型コロナの影響で経済危機が加速する可能性があります。

これを正のスパイラルに転換させるには、まず国民1人1人・企業1社1社が社会課題の認識を高め、それを解決する理念を持つこと。そして、それを実現するビジネスモデル、伝えるコミュニケーション持つことが、重要になります。これがまさしく今回の「ブランド×デジタル」ということになると思います。

ブランド理念の必要性を再確認する

山崎:続いて「Social Good Branding」についてお話ししますが、まずその根幹となる「ブランド理念」について確認しましょう。ブランド理念は経営の最上位レイヤー。最強の事業成長エンジンであり、最も重要な指標です。事業内におけるすべての活動指針は、ブランド理念に基づくべきです。

ブランド・マネージャー認定協会ではブランド戦略を「経営戦略とマーケティング戦略とコミュニケーション戦略の全体を包括したもの」と定義していますが、一言で言えば、「ブランド=経営理念」と考えてもらって差し支えありません。

そして、ブランド理念は構築してからがスタートです。ブランド理念をもとに、マーケティングとインナーブランディング(必要があれば、ビジネスリデザイン)を実行する。また、現在は反グローバリズムの流れがあるので、他国協調路線を取る。その中で重要なのが、ブランド理念の根幹である「らしさ」を持ち続けることです。それによって「持続的革新と成長」が望めるはずです。

例として、Amazonのビジョンは「地球上でもっともお客様を大切にする企業であること、お客様がオンラインで求めるあらゆるものを探して発掘し、できる限り低価格でご提供するように努めること」。また、Amazonは利益を上げない企業としても有名です。それは、利益を全部、顧客満足度向上のための開発や研究費に使っているから。ビジョンが経営戦略にダイレクトに反映されているというわけです。

ブランド理念を構築するフレームワーク



山崎:ブランド理念を体現するSocial Good Brandingを構築するために、私は3Cアプローチというスタンダードな手法を用います。顧客・市場(Customer)、自社(Company)競合(Competitor)をそれぞれ分析するわけですが、Customerでは市場だけではなく社会課題を含めて分析する必要があります。分析する層は、生活者インサイト<市場調査<マクロ環境分析<社会の動向です。Companyでは、創業理念といった会社の原点を社会の変化に適応させたらどうなるかを考えることで、自社の本質的価値を再探求します。Competitorでは、同業種他社・異業種他社・類似した社会的価値を持つ他社と比較することで、自社の特徴が浮かび上がってきます。その3つの分析結果に基づいてブランド理念を構築するわけですが、それがすなわち、ブランドの本質的価値となります。ブランド理念を構築するには客観的な意見も重要となるので、社外の人の意見も取り入れながら分析をすると、精度が高まると思います。



そして、ブランド理念を構造化するために、サイモン・シネックのゴールデンサークルという有名なフレームワークを利用しています。ブランド理念は根幹に①WHY(理念)があり、そこから同心円状に②HOW(らしさ)、③WHAT(事業・プロダクト)が描けるということなのですが、Appleを例に挙げると、①に「Think Different」を据え、②を「ユーザーフレンドリー、美しくかつシンプル」にすることで達成しています。その結果、完成した商品が③MAC、iPhone、iPadなどの製品というわけです。①と②を踏まえた製品だからこそ、消費者はAppleとして認識できるのです。

しかし日本の場合、③WHATから入る会社が多いんです。最初は企業理念と製品の辻褄がたまたま合っていたとしても、事業を拡大させるにつれて齟齬が生じてしまう。このゴールデンサークルを確立できて「Good Brand」から「Great Brand」へと成長できるでしょう。

日本のデジタル活用の現状

山崎:ブランド理念の構築法をお話ししたので、続いて、それを伝えるデジタル活用についてお話ししましょう。

まず、日本のデジタル活用の現状として調査データを紹介すると、広告戦略上の再重視項目はブランドで、2位は売上。それから、重視するメディアは現在はテレビですが、今後はデジタルという傾向ははっきり出ています(2019年トーマツ調べ)。2019年の電通の「日本の広告費」ではマス4媒体のプロモーション費は2.6兆円、インターネット2.1兆円ということで近づいています。インターネット広告を使っているのは、テレビCMが高くて手が出ない企業だと思いますが、テレビCMを打っている企業の中で宣伝要素の半分をネットで使っているところはほぼ耳にしないので、まだまだデジタル活用は生活者と乖離があるように感じます。

続いて、生活者のデジタル活用の現状です。インターネットの利用が高まっていますが、そのメディアへの評価として好感度・役立ち・楽しさ・必要性は高いものの、信頼性だけ低い。更に、インターネット広告はネガティブなイメージが強い傾向にあります(2019年JIAA調べ)。消費者が最も信頼する広告の調査の1位は、「友人や家族からの推薦」(83%)です。2位が「ブランドのオンラインメディア」(70%)、3位が「インターネット上の消費者の口コミ」(66%)、4位が「テレビ広告」(63%)でした。一方で、「ソーシャルネットワークの広告」は46%とあまり高くありません。(2015年ニールセン調べ)。

認識してほしいのは、近年コミュニケーションの構図が大きく変わり、発信の主体が生活者に変わっている点。そのため、企業は消費者と対等な目線でコミュニケーションし、消費者に拡散してもらう・評判を得ることが大変重要になっています。従来型マーケティングは終焉を迎えていると考えてもらって差し支えないでしょう。



また、生活者の購買行動も時代ごとに変化し続けています。高度経済成長期には、商品を作ってお店に並べれば売れるというモデルがありましたが、インターネットにより消費者は商品を検索・比較するようになりました。商品をネットで購入するようにもなりましたし、SNSの登場後は広告よりSNSの評判で商品を買うようになっています。そして、商品・体験がすごくいいとSNSでシェアもしてくれます。更には、お店で現物を確認してからネットで購入するモデルも話題になりました。最近はサブスクリプションが浸透し、会員制度や試し期間を設けるなど、購入前にワンプロセス入れるモデルも登場しました。このように、生活者の購買行動は今後もどんどん変わっていくでしょう。

では、ブランド理念を伝えるためにデジタルをどう活用すべきか?

ビジネスにおけるデジタルの重要性は伝わったと思いますが、デジタル・マーケティングは現在、大変複雑な状況にあります。ですから、次々に登場する新たな用語や大量の情報に振り回されずに、デジタル・マーケティングの根幹を掴むのが良いと思います。



まず、デジタル・マーケティングとは、デジタルのデバイス・メディア・データ・ソリューションなどを活用するマーケティングのこと。購入前の接点としては、特にSNSの活用が重要です。SNSの最大のメリットは、社会や市場動向・消費者の声・競合の評価といった生の声が把握できる点と、双方向のコミュニケーションができる点。更には、ターゲティングやアクティブサポートもできるメディアもありますね。日本では認知向上のためにSNSを利用していますが、海外ではSNSをエンゲージメントプラットフォームとして活用しています。SNSをうまく活用すれば、戦略からターゲット・コミュニケーション、ブランド評価まで、一通りのブランド・コミュニケーションが可能になります。



購入は自社サイトでしてもらい、そういったデータ管理は部門で区切らずに、総合的にマネジメントする。そういったプロセスを把握・マネジメントするためにマーケティングダッシュボードを用意し、現状を可視化するといいでしょう。



続いて、データを活用する手法としてデータ・ドリブン・マーケティングをご紹介します。これは、デジタルに限らず数字データ全般を主に、戦略や施策効果を判断してくマーケティングのこと。消費者の行動プロセスをベースに、様々なデータを取得して分析します。例えば、テレビCMなら視聴率、ネット広告なら表示回数、更にそこからコンバージョンや購入データなどもわかりますね。分析の際は、①顧客分析、②コミュニケーション設計、③施策の効果・予算配分最適化、④ブランド評価という4つの柱で考えると良いでしょう。データ・ドリブン・マーケティングの目的は、企業全体でのマーケティングROI(投資収益率)最適化です。データ分析は、会社が大きくなればなるほど部門ごと・ブランドごとに行なっている場合が多く、非常にもったいない。部門横断的なデータマネジメント、ブランド横断的なマーケティングROI(投資収益率)評価という視点が非常に大切です。また今後はブランディングと売り上げの中長期的相関を分析する王道な分析がより重要になると思います。

また、デジタルを活用した新しいビジネスモデルも登場しています。それがD2C(Direct to Consumer)という、デジタル中心に直接的で継続的な顧客接点(ブランド体験、対話、販売機会)を提供するモデルです。事例として、2015年に世界で最もイノベーティブな企業と評されたWARBY PARKERというメガネブランド挙げます。購入プロセスは、サイトからメガネを5本まで選択して自宅に配送させ、試着したら眼科の診断書を添付して返送し、ウェブで注文をします。この間に、顧客に向けて試着の案内や、迷っている時の連絡先などを細やかにメールすることで、データの取得とブランド体験による顧客満足度を両立させています。詳しくは、佐々木康裕著『「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』をご覧ください。

伝統ブランドとD2Cブランドとを比較すると、前者は商品のアピールに重点を置き、メーカー色が強く、販売がゴールです。後者はブランド全体のストーリーや価値観をアピールし、オウンドメディアにも注力し、販売後の継続課金や追加購入を視野に入れています。また、D2Cはまずデジタルありきで、リアルは必要最低限です。販売はECのみで、顧客との接点としてショールームを設けるなど、完全に主従逆転した設計になっています。

ブランド×デジタルの成功例

最後に、ブランド×デジタルの事例として、アメリカの老舗メディアであるNew York Timesを紹介しましょう。New York Timesは新興のインターネットメディアに読者を奪われて一時期業績が悪化したのですが、2014年に社内文書「イノベーション・リポート」をまとめ、改革を実施したことによりV字回復しました。

そのリポートでまず彼らは、自分たちの強みと弱みを定義しています。強みは「ジャーナリズム」、弱みは「ジャーナリズムを読者に届ける部分」でした。その改善として、「読者開発」と「編集局の強化」を行ないました。読者開発は、読者をリピーター→登録者→ロイヤルユーザーへと育てて関係性を深めていくこと。編集局の強化は、読者の求めるコンテンツを読者の求める形で届けること。そのために、新興インターネットメディアに取材してデジタル技術と人材を社内に呼びかけ、更に自社を根本から変える必要性に気付き、自らの伝統を壊すことでV字回復を果たしたといいます。

日本の場合は、デジタルトランスフォーメーションと言いながら、現状の組織を壊さずにデジタルだけを加える場合が多い。しかし実際には、アナログな組織に単純にデジタルを導入するのではなく、「自社の価値をデジタル技術を使って顧客に届けるために、組織と戦略をまるごと作り変える」必要があります。つまりそれが、自社の価値(ブランド)とデジタル技術を掛け合わせるということです。

社会大転換時代に生き残るためのポイントは、①社会課題に真摯に対峙し、本質的価値を通じた理念を掲げること(ブランド理念の確立)。そして、②大転換する社会環境に柔軟に適応すること(デジタル活用)。

ブランド理念やデジタル活用を考えるのを先送りにしてきた企業もあると思いますが、新型コロナの影響で早急に取り組む必要性があるでしょう。ただ、難しい面もあるので、お悩みなら我々にお気軽にご相談いただけると嬉しいです。

■一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会
https://www.brand-mgr.org/

■株式会社サイバー・コミュニケーションズ データ・ソリューション・ディビジョン
https://datacurrent.cci.co.jp/

■ 山崎浩人
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会アドバイザー、株式会社サイバー・コミュニケーションズ ブランド・コンサルタント、元ネオ・アット・オグルヴィ株式会社チーフマーケティングプロデューサー。広告会社、コールセンター事業者、モバイルキャリアレップCEO、クロスメディア事業者CEOなどを経て現職、2012年、日本自動車メーカー8社の共同プロジェクトである「Drive Heart」キャンペーン成功の功績によって「Web of the year」を受賞。以降は日本の大企業のブランド戦略やグローバル戦略を多数サポート。

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