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VC4社が語る!アフターコロナにおけるスタートアップ業界の行方

2020.07.08

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VC4社が語る!アフターコロナにおけるスタートアップ業界の行方
オンラインイベントレポート

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の緊急事態宣言が5月25日に解除され、本格的にWith/Afterコロナという在り方を意識しなければならない時代となった。そんななかでビジネス領域では、これまで以上にスタートアップの動向が注目されている。一方、スタートアップ自身は、外部からの投資・サポートが受けられるかを懸念しているだろう。コロナ禍においても、投資家や大企業の期待を集めるスタートアップについて、VC4社が語った。

コロナ禍におけるスタートアップの現状

2020年6月18日、fabbit株式会社は「VC4社が語る!アフターコロナにおけるスタートアップ業界の行方」という題目で、オンラインイベントを開催した。モデレータを務めるのは、株式会社パソナグループ/fabbit株式会社アンバサダーである塩谷 愛さん。パネルディスカッションの登壇者は、日本ベンチャーキャピタル株式会社/代表取締役会長・奥原主一さん、NOW株式会社/代表取締役・梶谷亮介さん、D4V(Design for Ventures)/プリンシパル・永瀬史章さん、三井住友海上キャピタル株式会社/投資開発マネージャー・細谷裕一さんだ。

奥原主一さん(以下、奥原):日本ベンチャーキャピタル株式会社は1996年に創業し、現在の累計投資社は1005社、投資金額は785億円にのぼります。ITに偏らず、医療や製造業、環境・エネルギーやサービスなど広範囲の業界に対し、ほとんどがアーリーステージ(起業直後)での投資を行なっています。

梶谷亮介さん(以下、梶谷):NOW株式会社は、2017年に家入一真さんと共同で設立しました。投資活動開始後、約2年間で、アーリーステージのスタートアップを中心に約70社に投資をしております。また、特徴としては起業家とベンチャーキャピタリストが組んで立ち上げた独立系VCということで、日本では珍しい形態化と思っております。

永瀬史章さん(以下、永瀬):D4Vは2016年の始業以来、スタートアップ支援を行なっています。強みは、日本の優秀な人材と技術力を、優れたデザインやネットワークで日本全国、世界に展開するサポートです。AI系のExawizardsやUbie、Cinnamon、ライフスタイル系のSTUDIO、airCloset、Deep tech系のScalarなど様々な分野の43社に対して、主にアーリーステージから投資をしています。

細谷裕一さん(以下、細谷):1990年に設立した三井住友海上キャピタル株式会社は、保険金の運用を目的として、純投資目線でベンチャー投資をしています。現在400億円前後の資金を動かしています。シード投資~プレIPOまでを投資対象としており、投資サポート、投資先が要求する条件をほとんど全うできる体制を整えています。



塩谷 愛さん(以下、塩谷): 新型コロナの影響下にある現在、各社の投資先の近況やスタートアップの現状はいかがでしょうか。

奥原:新型コロナによって、例えばシェアリングエコノミーのように直撃を受けやすい事業に着手していた会社は苦労しています。しかし、以前からの業績があったり、すぐに資金調達を行なったりと、何かしらの対応をした会社が多く、成功の兆しが見える会社も多いです。現在、スタートアップは、事業の変更や休止、継続を見極めることが求められる状況です。

梶谷:弊社の投資ステージが、ほとんどシードやアーリーだったのと、IT関連会社を主な投資先にしていたので、新型コロナによる悪いインパクトは少なく、むしろ追い風になった投資先が多かったと思います。もちろん、シェアリングやリアル店舗に関連する事業を行なっていた会社にとってはアゲインストですが、固定費の高くないシードやアーリーステージにあったので影響はそれほど大きくはありませんでした。

永瀬:すぐに打ち手が打てるスタートアップは、業界全体でみると追い風になると思っています。実際に投資先でもDX系やクラウドファンディング等はコロナによって大きな影響は受けておらず、逆に業績を伸ばしています。さらに、今後大企業のリモート化投資やアーティストやレストランをサポートする動きは加速するので、このようなニーズの変化の波をうまくとらえたいと思っています。一方で、実消費に結びつく業種は確かに影響を受けましたが、投資先各社は素早く対応できたので、これによって危機的な状況に陥った例はありません。また、これは大企業も同様ですがBtoBの営業の遅れによって、次四半期に影響が出る部分はあるかもしれません。

細谷:新型コロナによって人の移動が制限されたので、関連する事業を行なっていた投資先の売上は消えてしまいましたが、激しく急降下した会社は多くありませんでした。業務環境の古さを改善するようなサービスを提供するスタートアップには追い風が吹きましたし、プロダクトがしっかりユーザーに浸透している会社は、景気の悪化が懸念されるなかでも変わらずに、商談や問い合わせを受けています。ただし、解約が続いているような会社にとっては、完成度の低いプロダクトは厳しい環境下では通用しないと痛感する、良い機会になったでしょう。

Withコロナ時代を生き抜くスタートアップ

塩谷:新型コロナ前後で、投資スタイルや投資先への評価は変化しましたか。

奥原:シードやアーリーステージにあるビジネスへの影響はほとんどないので、弊社のスタートアップへの投資は変わりませんが、ある程度のステージに達している会社への投資は、以前より見極める必要があります。ただし、投資を決定する際のソーシングに変化はありません。これまでと同様、上場企業から信頼されているスタートアップは優秀なことが多いので、注意深く検討します。

梶谷:ファンドの資金の使い方として既存投資先へのフォロー投資に対する割合を増やしたこと、新規の投資先については、筋肉質なスタートアップへの投資をこれまで以上に増やしたことが特徴かと思います。

永瀬:VC業界は近年の蓄積があるので、マーケット自体はお金がありますが、新型コロナの影響によって投資は二極化しています。利益を出せる強い会社は変わらず資金調達ができる一方、利益や成長を示せない会社はこれまで高く保っていたバリュエーションを下げる必要に迫られます。また、VC業界全体としては既存の投資先により注意を払うマインドが強くなります。普段の業務では、弊社は元からオンラインを使っていたので、ソーシングや投資への影響はありません。

細谷:ソーシングに関しては、イベントの代わりを人脈が補完するようになった気がします。全体的にVCからの出資が減った影響か、当社への資金調達の相談数は増加しています。当社へ資金調達の相談があった企業数から投資へ至る企業数を対比すると、コロナ前と比べて投資へ至る比率は下がっているでしょう。

塩谷:この状況で投資したいスタートアップに対して、VC視点からのアドバイスはありますか。

奥原:これから投資したいのは、遠隔を意識したビジネスです。今後の投資相談は、今までどおり担当に問い合わせて面談したらいいと思います。

梶谷:新型コロナを意識した事業ということは当然に考慮しますが、これまで同様、信頼できるチームに投資を行なっていきたいと思います。

永瀬:個人的には時勢に沿い、かつ今後も成長が期待されるリモート/バーチャル系、ヘルスケア系やディープテック系に特に注目しています。忠実なチーム作りと、マーケットやユーザーをしっかり見据えたプロダクト作りを心がける経営者への投資を、今後も続けます。

細谷:生活様式の変化によって生じたり成長したりするマーケットを意識したいです。投資家の目線は確実に厳しくなっているので、プロダクトの段階・質を徹底して欲しいと思います。シビアな現状ですから、プロダクトの完成度は一層問われることでしょう。

塩谷:新しい課題に速度感をもって取り組むスタートアップへ、最後にメッセージをお願いします。

細谷:弊社は未来を創るビジネスや、日本の未来を変えようとするベンチャーの皆様の応援・投資をしたいと思うので、ぜひ相談してください。このくらい厳しい環境を乗り越えないことには先がない、と考えれば現在の環境はとチャンスだと思います。

永瀬:現状を乗り越えることで、チームやプロダクトは一回りも二回りも強くなります。基本に忠実に、筋肉質な組織で良いプロダクトを作るスタートアップにとって、現状はネガティブではなく、むしろ最大のチャンスになります。そのような経営者と世の中を変えるプロダクトを一緒に作っていきたいです。

梶谷:スタートアップはスムーズに成長しているイメージをお持ちの方もいるかと思いますが、実際は多数の苦労を乗り越えているケースがほとんどです。ハードシングは長期的には筋肉質な体制作りにも大きく貢献するものと前向きに捉え、頑張ってください。

奥原:過去、不景気の反転時期は、いつでもスモールカンパニーやスタートアップに可能性がありました。歴史と人から学んで、新しい時代を切り拓いてください。

塩谷:不況下でもVC各社の投資先が成長しているのは、いち早く情報をキャッチアップし、事業の方向性に手を打てる、行動力の高い事業主だからだと思います。VC業界全体でエコシステムのような相乗効果を発揮できるよう、今後も投資や支援活動を続けていきますので、どうぞよろしくお願いします。

逆境に強く堅実なビジネスを展開できるスタートアップは、With/Afterコロナ時代においても、投資家や大企業に大きな期待を寄せられることとなるだろう。

■ 株式会社fabbit
創設以来、4人のアドバイザリーボード・メンバー、複数人のアンバサダー・メンバー、ほか多数の有資格者を用意し、スタートアップへの徹底的なサポート事業を行なう。10種ほどのスターアップ支援プログラムや交流会を実施するほか、官民協働型施設・地方自治体の補助事業も行なう。現在の会員数は10680人、国内外拠点数は45ヶ所、マッチング件数は116,362件、イベント開催数は2888回。施設提供にとどまらず、イノベーションを生み出すコミュニティプログラムも提供している。
https://fabbit.co.jp/

■ 田中保成
fabbit株式会社代表取締役社長。ハーバード大学MBA・東京大学卒業。ボストン・コンサルティンググループや大手商社を経て、CEOに就任。 訳書『スタートアップで働くということ ~起業家ではなく参加者として会社を立ち上げる』(HBS 上級講師 ジェフリー・バズギャング著)

■ 塩谷 愛
株式会社パソナグループ ベンチャー戦略本部 事業開発ディレクター 学生起業家として、京都の伝統産業再生プロジェクトや起業家育成事業を立ち上げ。その後、ベネッセコーポレーションでネット系新規事業の立ち上げ後、ベネッセホールディングスに異動し経営企画・R&D部隊でオープンイノベーションを担当。 渋谷でEdTech分野のコワーキングの運営後、2016年に富士通入社し、オープンイノベーションを通じて新しいビジネスを生みだすため、富士通アクセレータプログラムの立ち上げに尽力。 その後2018年よりセキュリティスタートアップCapy(キャピー)に参画し、事業開発をリード。コワーキングスペースfabbitのエコシステム形成や、複数社のアクセラレータプログラムの裏方や、メンターを担いつつ、世の中をアップデートする活動をプロジェクトベースで実践開発中。現在は、パソナグループの新規事業を具現化中。

■ 奥原主一
日本ベンチャーキャピタル株式会社代表取締役会長。92年東京大学工学部産業機械工学科卒。94年東京大学工学系研究科情報機械工学を修了し、同年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。大手メーカーにて最先端の技術コンサルティングに関与。98年日本ベンチャーキャピタル入社。08年取締役投資部長就任。09年4月代表取締役に就任。

■ 梶谷亮介
NOW株式会社代表取締役。1977年生まれ。みずほ証券株式会社におけるIPOを中心とした投資銀行業務、新生企業投資株式会社でのベンチャー企業の投資育成、その他のキャリアにおいても一貫してベンチャー企業の投資や育成に関与し、2017年家入と共に当社設立。IT系スタートアップを中心に、多くの投資育成やIPO支援の実績を有する。

■ 永瀬史章
D4Vプリンシパル。大学院修了後、新卒でPwC Strategy&に入社。Strategy&では総合商社、物流、保険、医薬等の業界に対して、M&A戦略、新規・中長期事業戦略、ポートフォリオ・マネジメント戦略、コスト削減、デューデリジェンス等のプロジェクトに従事。2018年にD4V入社。慶應義塾大学理工学部卒業 慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。スウェーデンLund university Faculty of Engineering修了。専門は神経・認知科学、バイオテクノロジー。

■ 細谷裕一
三井住友海上キャピタル株式会社投資開発マネージャー。 2009年KDDI入社。2014年より、KDDIのCVCである、KDDI OPEN INNOVATION FUNDにてベンチャー投資にかかわる。同社M&A部門を経て、2018年12月より、現職。

 

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