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レポート

With/Afterコロナを生き抜く新事業と人材を語る

2020.07.17

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meetALIVE vol.16 目利きの澤円とスタートアップ
オンラインイベントレポート

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)によって、社会にはデジタル化・DXの流れが加速している。今後、ビジネス運営の方法や事業内容は、大きな変化を見せることが予想されるが、With/Afterコロナという時代において、成功をとげる事業や活躍する人材とはどのようなものだろうか。

2020年5月21日、「meetALIVE vol.16 目利きの澤円とスタートアップ」というウェブイベントが開催された。主催者は、「ソフトウェアで日本を強くする」というビジョンのもとに約70社の企業が集うIT業界団体“MIJS”を母体とするコミュニティ「meetALIVE」。

株式会社圓窓/代表取締役・澤円氏をモデレータとし、ゲストにファストドクター株式会社/創業者および医療法人社団新拓会/理事・小石祐司氏、btrax Japan/Senior Advisor・佐藤英丸氏、ビジョナル株式会社/執行役員・佐藤和男氏を招いて対談が展開された。

成功する新事業は、逆境のなかで生まれる

澤円氏(以下、澤):私は現在、外資系大手IT企業のほか、客員教授として大学に勤務しており、来年からは武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の教員も務めます。今日は、企業を試みている方、社内の新規事業担当者、ぼんやりと世のなかを面白くしたいと思っている方へのメッセージとして、議論を進めていきたいと思います。まずは、自己紹介をお願いします。



佐藤英丸氏(以下、佐藤英):btrax,Inc.は、創業16周年を迎える会社です。社名は、レコード盤の裏側であるB面を由来にしており、メインパートの下支えになるという方針から名づけました。事業内容は、国内企業が米国市場に進出する際のブランド作りや新商品開発のサポート、あるいは米国の会社が日本市場に入るときのサポートをしています。徹底したユーザーセントリックを心がけており、お客さんを第一に、すべての関係者を幸せにすることをモットーにしています。

佐藤和男氏(以下、佐藤和):ビジョナル株式会社は子会社に株式会社ビズリーチを擁するホールディングカンパニーです。リーマンショック真っ只中の2009年に創業し、成長してきた会社です。

小石祐司氏(以下、小石):株式会社マクロミルやオプトを経験したのちにウェブ制作会社を立ち上げ、現在はファストドクターという医療事業を展開中。夜間休日に医療機関にいくことが難しい患者さんに対して、往診を行う事業を提供しています。

澤:それではまず、ファストドクターを提供する小石祐司さんに、事業をスタートした当初のエピソードを伺いたいと思います。

小石:独立したあとに起業を考えている医者と出会い、築50年くらいの数畳しかないアパートを借りて医療機関を創り開業しました。少しずつアクセスが増えていき、結果、現在のような医師700名をネットワークするまでの事業規模になっていました。

澤:小石さんと共同者さんの開業のように、パッションしかないような事業スタートを切る、という話をよく聞くのですが、和男さんや英丸さんはどうでしょうか?

佐藤和:私がビズリーチに参画する決め手となったのは、創業者・南壮一郎さんの率直さや異常な行動力でした。当初は小石さんと似たようなもので、渋谷のワンルームマンションにオフィスを構え、そこで寝泊りしながら事業を進めていました。ビズリーチは個人課金による転職サイトですが、日本では前例がありませんでした。ですから、初めて課金されたときには思わず両手を上げてしまうくらい、嬉しかったです。

佐藤英:私は自身の会社にオフィスや事業の拠点を用意してもらえるので、小石さんや和男さんが経験したゼロスタートとは異なります。けれど、btrax Japanとして東京に支店が置かれ、そこから事業が機能するようになったのが近年であることを考えると、事業の開始当初は何もない状態でした。また、現在まさに事業展開を志す若者たちを励ましてサポートすることが仕事なので、その知見は持っています。

澤:3社の事業スタートにおける共通点は、みなさんの共同者に可愛げがあるところでしょうか。下準備もないのに無謀なチャレンジをしようとする。完璧でもなければ天才でもなく、致命的にどこかしら抜けています。でも、不完全なところがあるが故に、支えてくれる者が集まってくるという力学的なものも感じます。

登壇者らの事業はどれも、先行きが不透明な地点から展開されたけれども、現在の起業ビジネスを牽引するような成功を収めていますよね。ビジネスを始める際の問題意識が、そのまま事業を展開するモチベーションとなったわけですね。

With/Afterコロナにおけるビジネスチャンス

問題意識が起業ビジネスを牽引する大切な要素なら、コロナ禍中のいまは大きなチャンスがあるとも言える。登壇者らは、現在のビジネスチャンスをどう捉えているのだろうか。

澤:新型コロナによる変化に直面しリセットのかかった社会において、今後のビジネスの伸ばし方、チャンスの捉え方ついて、どうお考えでしょう?

佐藤英:新型コロナ鎮静後に、以前の生活が戻ると思ってしまったら、新しいビジネスは望めません。Withコロナのあり方に対して、試行錯誤を続けられるかどうかで、今後のビジネスの明暗が分かれると思います。戻るということは、引きかえすということです。在宅ストレスや行政の混乱などで社会が疲弊しているいま、ITの可能性をポジティブに捉えて欲しいです。

澤:日本は何もないときでも、元に戻そうという圧力が強いですよね。例えば、道路や物流を元に戻すことが大命題であった3.11では、その圧力もプラスの力になりました。しかし今回は、飛行機や電車で移動するといったこれまでの“当然”が、盤石ではないと判明しました。

佐藤英:国内外でコロナ禍に苦しめられているわけですから、COVID-20も想定されるようなAfterコロナを前提に、ビジネス構想をするほうが賢明です。いまは、新しいものにチャレンジするうえで、これまでにない土台が用意されているのです。

澤:新しい状況のなかで価値を生み出すという点でいうと、リーマンショックという逆境を乗り越えたビジョナルでは、どのように考えていますか?

佐藤和:弊社は経済危機のときに創業したことが、会社にDNAとして刻まれていると、個人的には思っています。順風も逆風も風は風。風を捕まえてどう乗るかが重要です。小さな会社にとっては、周囲が動きを止める逆数の時こそが、むしろチャンスだと思っています。弊社としても動きを止めることなく、次の一手を常に考えています。

澤:そして、何よりもコロナ渦中にいるファストドクターは、従来的な方法では太刀打ちできない状況だと思うのですが、どのように立ち回っていますか?

小石:新型コロナウイルスが感染拡大をしたときには不足した医療衛生物資への対応と、医師を守る体制づくりが大変でした。なんとか物資を揃え、ファストドクターは発熱患者を断らない!というスローガンのもとにチーム一同頑張りました。

変化する社会に求められる人材と職場とは?

澤:さて、質問は変わりますが、マネジメント側はこの不安定な時代において、どのような考え方で事業に取り組めばいいと思いますか。

佐藤英:ビジネスはひとりではできないので、まずは協力者を見つける必要があります。求められている力は、市場を見る力・物事を俯瞰する力・政治力・精神力・リーダーシップの5つです。さらに今後は、対面の価値が上がります。会いたいと思わせるパフォーマンスによって、遠隔でも信頼と尊敬の関係を構築することがかなり重要になってくると思います。

澤:部下を信頼していない上司は監視に走り、そんな上司を信頼していない部下は監視のまなざしに嫌悪感を覚える。たしかに、信頼関係の貯金のなさが在宅勤務やリモートワークによって、顕著に出るようになりました。また、人材確保という観点でいうと、今後はハイブリッドに働ける人が重宝されるようになり、ハイブリッドな働き方を受容する会社が優秀な人材を確保することになるでしょう。人材開発を扱うビジョナルはこの点、どう考えていますか?

佐藤和:企業の採用活動についていえば、まさにいま、あえて攻めの採用をする企業と、採用を新型コロナ鎮静後に引き伸ばす企業と、動きが二分しています。実際に候補者と会って面接しないと分からないし採用を決められないという価値観が強い企業では、採用は完全にストップしています。確かに、対面会うからこそわかることもあるとは思いますが、逆に対面でしか分からないこととは何か?本当に対面でなければ採用はできないのか?という逆転的な考え方もできます。採用要件によっては、リモート面接でも十分に意思決定ができると私は感じています。

澤:そうですね。今後は、一度も顔を見ないまま面接、仕事の依頼、退職という働き方が始まるかもしれません。対面してもしなくても話の内容は変わりませんから、実績というものがネット上で担保されるのであれば充分、という考え方が生れるかもしれませんね。それでは最後に、参加者へのメッセージをお願いします。

佐藤英:自分の考えている事業が、世のなかをどのように良くしていくのか、どんな人たちを幸せにするのかに対するイメージをしっかり持ってください。そして、人を好きになるために相手を尊敬し、信頼できるパフォーマンスをお互いに意識する。そのためには、自分をブラッシュアップするところから始めてください。ビジネスのキーワードは「人」だと思います。

佐藤和:繰り返しになりますが、逆風も順風も風は風だと私は思っています。シビアな状況において大きな組織の動きが止まったとき、小さな組織や個人にとってはチャンスですから、いまこそ行動のときではないでしょうか。

小石:街にでるとゾクゾクして少し怖くなる瞬間があります。 たとえば、渋谷スクランブル交差点で周りを見渡すと、目に入るものすべてが誰かの新規事業です。新規事業は人生をかけて膨大な熱量がないと生み出されません。いま生きている世界は誰かの新規事業の結晶だと思うと、スタートアップを応援したいし、自らも頑張ろうと思えますよね。

澤:シリコンバレーにおいて、投資を決めるものさしは、良いプランや賢明さを持っていることではないと聞きました。投資家たちに認められるためには「クレイジー」であることが大事。、さらに上を目指すなら「シック=病的」にならなければいけない、ということらしいです。面白いことはどんどんアウトプットしていくことが大切ですね。

■ meetALIVE 「毎日をより楽しく、世界をより豊かにしよう!」と挑戦を続けるイノベーター達と語らうmeet-upコミュニティ。アイデアとテクノロジーで人の心を動かすプロダクトやサービス、それを作る人にスポットライトを当てたイベントを用意している。

登壇者
■澤 円(株式会社圓窓 代表取締役)
大手外資系IT企業所属。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手IT企業に転職。ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006年にマネジメントに職掌転換。2019年より(株)圓窓 代表取締役就任。企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動中。Voicyパーソナリティ、琉球大学客員教授も兼任。
Twitter:@madoka510
著書
『外資系エリートのシンプルな伝え方』中経出版
『マイクロソフト伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』ダイヤモンド社
『あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント』セブン&アイ出版
共著
『未来を創るプレゼン』プレジデント社(共:Yahoo!アカデミア学長・伊藤洋一)
連載
『澤円が解説!TechキャリアNew Wave』エンジニアType

■小石 祐司
ファストドクター株式会社 創業者・医療法人社団新拓会 理事。近畿大学経済学部卒業後、株式会社オプト・株式会社マクロミルにてマーケティングを学ぶ。2016年2月に医師菊池・医師名倉と出会い、ファストドクターを創業する。新型コロナウイルス対策として、4月14日に『救急オンライン診療』を立ち上げ、医師と共に24時間体制で業務に励む。
HP: https://fastdoctor.jp/online-consultation/

■佐藤 英丸
btrax Japan Senior Advisor。1978年早稲田大学理工学部卒業。1980年米国スタンフォード大学大学院卒業後、日本ユニバック(現日本ユニシス)で、コンピュータアニメーションシステムの開発に携わる。95年にシチズン時計株式会社の米国現地法人代表。97年にAOLジャパン株式会社の代表取締役に転進。2003年4月、メディア·メトリックス·ジャパン株式会社CEO、その後、米国ダブルクリック社の100%出資によるアバカス·ジャパン株式会社の代表取締役社長、エクスペディア·ジャパン株式会社の日本法人代表、コムスコア·ジャパン株式会社の代表取締役を歴任。2014年9月より、米国サンフランシスコ本社のグローバルイノベーションを生み出すエクスペリエンスデザイン会社btrax incの日本法人であるビートラックス·ジャパン合同会社のシニア·アドバイザーに就任。

■佐藤 和男
ビジョナル株式会社 執行役員。早稲田大学法学部卒、シンガポール国立大学経営学修士(MBA)。マイクロソフト、リクルート、ジョブウェブを経て、2008年より株式会社ビズリーチに創業メンバーとして参画。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を中心とした採用支援事業の立ち上げを行う。海外事業や子会社の立ち上げ、CS本部長、人事企画部長、人財組織開発部長などを歴任。直近は社長室にて全社横断のプロジェクトに関わる。

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