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レポート

サムライインキュベート×AND ON SHINAGAWA コロナショックが切り拓く、モビリティの明るい未来

2020.07.29

「デジタル時代のモビリティ×ライフスタイル」のイノベーション創出を目指す“オープンイノベーション・コミュニティAND ON SHINAGAWA”と,シードVCであり,モビリティ領域のスタートアップへの投資も積極的に行うサムライインキュベートによるオンラインイベント「モビリティのパラダイムシフトは移動体験をどう変える?EcoMotion報告会&パネルディスカッション」が2020年6月3日にオンラインで開催された。

Eco Motionで見えた、モビリティ業界の流行と最先端

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響により、モビリティ産業は世界的な注目を集めながら、その可能性を急速に広げつつある。まさに、パラダイムシフトの渦中にあるのだ。そんななか、イスラエルのテルアビブで開催された世界最大規模のモビリティ系スタートアップの祭典「エコモーション(Eco Motion)」は、モビリティの明るい未来を確認する場として、モビリティ業界を世界規模で賑わせた。

本イベントの第1部では、イスラエル国における「エコモーション(Eco Motion)」の開催を受けて、株式会社サムライインキュベートは「モビリティのパラダイムシフトは移動体験をどう変える?」という題目のもと、他の参加企業と同会の報告会・パネルディスカッションを行なった。

サムライインキュベート 佐藤 氏(以下、佐藤):株式会社サムライインキュベートは「できるできないでなく、やるかやらないかで世界を変える」というビジョンで、新しい価値創造を志向しています。ベンチャーキャピタル事業として2008年に始業して以来、日本初のコワーキングスペース、日本初の大企業向けアクセラレーター事業を提供しているほか、ベンチャーキャピタル事業とオープンイノベーション事業を世界規模で行なってきました。スタートアップと大企業の両方に関して、立ち上げからEXITまでの事業創造を一気通貫で支援しています。



第1部「Eco Motion報告会」では、佐藤 氏と同企業の武田 氏(以下、武田)、鈴木 氏(以下、鈴木)により、イスラエルとモビリティ産業との親和性や、最先端のモビリティ関連製品について、報告がなされた。

佐藤:報告会の導入として、イスラエルのモビリティ業界が世界的な注目を集めている理由を説明します。イスラエルでは、モビリティ領域に含まれる自動車や輸送、コネクテッドカー、スマートモビリティ、シェアリングに携わるスタートアップ企業が640社あります。これは同国の総スタートアップ数の10%を占め、資金調達額は52億ドルに上ります。

イスラエルでモビリティ関連のスタートアップや投資が増えている要因は、①スマートフォンやクラウドサービスが身近になった、②グーグル・アップル等の米国IT大手企業が参入している、③Mobileyeという先進事例が成功した、④国の特色としてモビリティ関連技術に強い、という点が挙げられます。続けて武田から、Eco Motionの概要と見解をお伝えします。

武田:今回のEco Motionは、2020年5月18日から20日に開催されました。新型コロナの影響を鑑みてバーチャル開催となりましたが、事前プロフィールの収集によって手軽なチャットが可能だったり、スケジュールの設定が即時に行なえたり、人脈の形成をしっかりと促す会場設計が徹底されていました。計2300件のバーチャル商談、15000件のチャットが行なわれた結果からすると、バーチャルになったことでスタートアップ側の参加がしやすくなり、例年より盛況を納めたといえます。



Eco Motionでは最新のトピックとして、Afterコロナのモビリティ業界に関心が寄せられていました。国によっては電気自動車が伸張を見せたり、シェアモビリティのもとでスクーターが増加したりと、全体として自動運転やコネクテッドカーの重要性が高まったようです。経済面では新規よりも既存の投資先に対する額がのぼりますが、投資総額は増えていくことが予想されていました。

佐藤:私は、With/Afterコロナにおける街のモビリティ動向と、トラックの自動運転市場に関するディスカッションを興味深く聞きました。

それぞれ3つの質問に登壇者が答えていく形式でしたが、まず、街のモビリティ動向の1つ目は「現在の街の人々の身近な変化について」。移動手段が変化しつつあり、公共交通機関の利用の制限から、徒歩や自転車やe-スクーターが見直されています。私用車は継続して利用される一方、所有をやめる人も現れています。また、公衆衛生や通勤への意識が変容しつつあるようです。

2つ目は「危機の中で見える、モビリティ業界の可能性をどう見る?」という質問で、まず衛生観念の変化から今後は、公共交通機関の利用は減少し、中距離移動ではマイクロモビリティの利用が増加するだろうと。また、関連事業として車内衛生・オンライン販売・物流・デリバリー関連事業の需要が高まるという意見もありました。さらに、EV車へのシフト傾向が加速したり、公共機関の変革の必要性から政府規模でのイノベーション意識が高まったりしています。

3つ目の「コロナショックの中でスタートアップはどのような機会・可能性があると思うか」という質問では、積極的なオープンイノベーションを勧められました。スタートアップは、臆せずに早急な人脈形成をすることが重要とのことでした。



また、トラックの自動運転市場に関する質問の1つ目は、「トラック市場の現状課題と将来の展望」。まず、市場は米国が他国と比較して進んでいるとのこと。また、トラックの自動運転には、乗用車に比べてハードルが高いという課題があります。悪天候・悪路での走行、車体強度、24時間長距離走行に耐えうる仕様でなくてはなりません。そして今後は、荷物の積み込みから荷降しまで一貫で対応できるサプライチェーンが求められるでしょう。

2つ目は、「実務的(法律、制度etc)課題」について。自動運転の導入は、国によって法制度が異なるので、サプライヤーの統一規格での製品供給が現状厳しいという課題があります。また、顧客の安心感を獲得するための顧客教育も必要でしょう。

3つ目は、「今後フォーカスするべきポイント」について。自動運転のサービスは、乗用車の前に商用車と順を追って開始される可能性が高いです。また、現在プレイヤーが少ないので、トラックは市場として可能性があると言えるのです。

鈴木:最後に世界各国において最先端と思われる6つのスタートアップをピックアップして紹介します。1つ目はMoovit。すべての都市部の交通手段と乗り継ぎに対応したルートを提供するアプリです。2つ目はHi.Auto。今後、自動運転が普及すると、車内でAIに音声で指示する機会が増えると想定し、騒音を取り除き、スピーカーのみに焦点を合わせる音声認識プラットフォームを開発しました。

3つ目はBrightWay Vision。ゲーテッドイメージング技術に基づく前方監視運転支援システムにより、視界の悪い夜間や雨中・霧中の走行をサポートします。4つ目はNoTraffic。交差点に独自開発したエッジデバイスを配置し、それらを統合制御するコントロールユニットを通じて、交通量や歩行者の待ち時間などに応じてリアルタイムに信号制御を最適化し、交通滞留の減少につなげます。

5つ目はContinUse Biometrics。服を着たままで呼吸状態、肺機能、心拍、体温、血圧、脈波伝播速度、ブドウ糖、アルコールレベルといったバイタルデータが測定できるサービスを開発しました。運転者の体調のスクリーニング・モニタリングを行ないます。6つ目はNanoScent。ナノテクノロジーを活用した臭気検知センサーと、検知したデータを活用するIoTプラットフォームを開発し、車内や呼気の臭いから異変を感知します。以上がEco Motion報告会の一連となります。



大手企業が見通すWith/Afterコロナのモビリティ

第2部では、報告会の内容を受け、モビリティ領域のイノベーション創出に取り組むキーマンによる「パネルディスカッション」を展開。新型コロナによるモビリティへの影響や、これから予想される変化への意見交換が行なわれた。

登壇者はVia mobility Japan/CEO 西島 洋史 氏、Anchorstar Inc/Japan Entry 苔口 穂高氏、株式会社シナスタジア/CEO 有年 亮博氏、株式会社京浜急行電鉄/新規事業企画室 橋本 雄太 氏。モデレータは、サムライインキュベート 宿輪 大地 氏だ。

西島 洋史 氏(以下、西島):Viaは、2012年にイスラエルでビジネスを始めた会社です。相乗りシャトルや相乗りバスをアプリや電話で予約・配車できるソフトウェア事業を、自治体やバス会社、タクシー会社に向けて展開しています。



苔口 穂高 氏(以下、苔口):Anchorstar Inc.は、日本の底力を引き上げるべく、新たな視点をもつ海外のスタートアップと日本企業とのパートナーシップをプロデュースしています。クロスボーダー・クロスインダストリーの協業、またはパートナーシップを醸成するための支援を行なっています。



有年 亮博 氏(以下、有年):株式会社シナスタジアは、AR・VR技術を専門に学ぶ大学院生によって2年前に起業された会社です。現在は、自動運転ソフトウェアを手がけるティアフォーグループの一員として、自動運転時代におけるモビリティ体験の価値創造を企図し、既存の乗りものにAR・VRを活用する研究開発に取り組んでいます。



橋本 雄太 氏(以下、橋本):京急の新規事業企画室では、鉄道会社のビジネスモデルを時代に合わせて変革させるため、スタートアップの皆さまとのオープンイノベーションを戦略的に進めています。AND ON SHINAGAWAでは、拠点を中心に関係者のコミュニティ形成を進めるほか、「京急アクセラレータープログラム」による京急グループとスタートアップの事業共創を行っています。



宿輪 大地 氏(以下、宿輪):まずは、新型コロナの感染拡大がモビリティ事業にどんな影響を与えているのかについて、皆さんの見解をお聞きしたいと思います。



西島:弊社では、赤字路線をデジタル利用によってシャトル化するという動きが一気に加速しました。このデジタル化やシャトル化は提供側・利用側どちらにも有利に働くので、今後も事業を継続する際に応用できます。例えば新型コロナにおいて、住民には不用のシャトルを医療従事者向けの移動手段に転用しました。また、シャトルと仕組みが似ているラストマイルデリバリーも拡大することができました。弊社のプラットフォームでは信頼を心がけ、何より柔軟な対応をすることで、即座に体系の似通った事業へ転用することができ、ビジネスの成長を確保できたのだと思います。



苔口:海外企業は元から遠距離のやり取りに慣れていたため新型コロナへの対応が早く、オンライン切り替えが続々とされました。今回、モビリティが変わったのは、社会全体で移動という行動が意識され、交通手段にとどまらず、ITや不動産においても移動の効率性が注目され始めたことだと思います。新型コロナ以前にも、例えばシンガポールは国土利用を最大化するため、行政主導でシェアライドを促進し、地上交通を最大限効率化することで、道路を削減していますが、そのように新たな移動のあり方を見直す動きは、より高まるのではないかと見ています。



有年:弊社は初期段階にあったので収益面で影響を受けていませんが、予定していた交通機関やテーマパークとの協働事業の再開の目処が立っていません。ただ、乗車賃の高さを付加価値によって埋め合わせるという、弊社のエンターテインメント性に変わらない需要があるという点においては、希望があると思っています。

橋本:鉄道会社の現状は利用者数が前年の6割減と、過去になく厳しいです。緊急事態宣言の解除後、徐々に利用者は戻りつつありますが、コロナ以前に戻ることは難しいでしょう。しかし、当社が以前からスタートアップとのオープンイノベーションを進めている理由は、人口減少とテクノロジーの進化により、移動の総量が減少する中で、デジタルとリアルを融合させた新しい顧客価値を生み出す必要があるという考えによるものでした。その点では取り組むべき方向性はこれまでと変わらず、むしろ加速させていくタイミングだと考えています。

宿輪:Withコロナ社会は、モビリティ業界におけるパラダイムシフトを加速させそうですが、今後の社会に対して、企業はどのように応じるべきでしょうか。

苔口:弊社は現在、働く場所を家にするかオフィスにするか話し合っています。誰もが同じ環境で仕事のできるオフィスに比べると、家では家族がいたりワンルームだったり、同じ生産性を求めるのは難しいと考えられ、今後はバランスの取り方が問題になると思います。海外では長距離通勤者のために、Wi-Fiと勤怠管理システムの搭載されたバスなどがあるので、日本でも導入されたらいいと思っています。変化を好まない日本ですが、大企業がテレワークを考え始めている昨今の動向に期待したいと思います。

橋本:この危機を契機に、日本全体がトランスフォームしないといけないと思います。日本は大企業がアセットを抱えており、特に交通などのインフラや不動産ディベロッパーなどが危機感を持ってスタートアップと手を組み始めているのは良い流れだと思います。こうした中でリアルとテクノロジーの融合が進んでいくでしょう。



西島:変わろうとしているビジネスは、きちんと変わっています。危機感も大事ですが、長期的な影響を予測できる時代ですから、冷静に見通しを立てられる企業ならば、破壊的な状況に陥る前にイノベーションは出来ると思います。

有年:弊社では、自動運転の時代が到来することを前提にしたサービス作りをしていたので、新型コロナは中〜長期的に見たら追い風になっていると思います。日本における新型コロナのインパクトは、他国ほど壊滅的ではないので、破壊的なイノベーションを求めるより、リーダーとなる大企業や政府が先導になって持続的に変化をしていけばよいと思っています。



宿輪:さらに、ポートフォリオの観点でいうと、イノベーションを自らマネジメントしていくという動きは大事かもしれませんね。

いま、モビリティ系スタートアップにもとめられているのは、日々アップデートされていくモビリティの価値に寄り添うビジネス展開を意識すること。モビリティの変革は、新型コロナの影響を含めた現状課題を解決する方向へと導き、今後も勢いを増していくことになるだろう。思い描いていたモビリティ変革の未来は、コロナショックによってむしろ、早く到来するのではないだろうか。

登壇者
■西島 洋史 Hiroshi Nishijima
Via mobility Japan/CEO
https://viajapan.jp/

■苔口 穂高 Hodaka Kokeguchi
Anchorstar Inc/Japan Entry
https://www.anchorstar.com/

■有年 亮博 Akihiro Aritoshi
株式会社シナスタジア/CEO
https://synesthesias.jp/

■橋本 雄太 Yuta Hashimoto
京浜急行電鉄株式会社/新規事業企画室/主査
http://openinnovation.keikyu.co.jp/

■宿輪 大地 Daichi Shukuwa
株式会社サムライインキュベート/Senior Manager, Enterprise Group
https://www.samurai-incubate.asia/

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