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レポート

優秀な人材を確保し、新事業を開拓するには? これからの企業に求められること

2020.08.01

変化が求められる時代、ビジネス領域における変革がその核となることは容易に想定され、実際に、インターネットやテクノロジーの台頭による消費者行動・市場の変化、スタートアップ企業の隆盛、何よりも、企業における新規事業への気運が高まっている。そのような時流に応じるため、まず企業が目を向けるべきは、社内の優秀な――新しい事業を創造する力を持っているイントレプレナーの存在であるだろう。

新規事業にとって風通しの良い会社へ

Creww株式会社はオープンイノベーションプログラムの一環として、イントレプレナー・コミュニティの形成を目的とした「Intrapreneur’s Hub」を展開している。イントレプレナー共通の課題や悩みの共有、ノウハウのシェアを毎月一度のペースで開催するなか、6月24日に行なわれた「Intrapreneur’s Hub Vol.6」では「発掘!社内の隠れ起業家!」というテーマでディスカッションが行なわれた。モデレーターは株式会社funky jump/CEO・青木雄太さん、パネリストは株式会社デジタルガレージ/DG Lab本部/プロジェクトマネージャ・岩永龍法さん、富士通株式会社/FUJITSU ACCELERATOR・松尾圭祐さんだ。

松尾圭祐さん(以下、松尾):私は当初、富士通株式会社で新ビジネスを作ろうとしていました。しかし、ビジネスをイチから始めるのは大変なので、スタートアップの力を借りた新規事業の立ち上げを企図しました。現在では、スタートアップとの協業を推進するため、企画を提案して事業の募集を行なう、アクセラレータ・プログラムを実施しており、70件の協業実績があります。

岩永龍法さん(以下、岩永):私は株式会社デジタルガレージにおいて、研究開発と事業開発との併合した部署で活動をしています。テクノロジー系の事業に携わるシリーズAくらいの会社に、ファンドを行なったり提携したりしています。起業家がどのように輩出されるのかを考えていきたいです。

青木雄太さん(以下、青木):まずは、イントレプレナーが育ちづらい環境にある企業のデメリットについて体験や所感を教えてください。

松尾:富士通はモノ作りをする企業であることから、自分で作るというDNAが強すぎて、一貫してビジネスを行なうには時間がかかり、ユニークなものを案出してもスタートアップに先取りされていたことが多々ありました。マーケットを早く押さえるためには、自前にこだわりすぎてはいけません。自分が得意なところを理解しつつ、足りないところを外部で補うことが大事だと思います。

青木:確かにスタートアップは、企業に比べて機動力が高いですね。同じアイデアを発想しても、とりわけ大企業だとカタチにするまで時間がかかってしまうので、スタートアップがサービスとしてすでにローンチしていることは多々あります。

松尾:そうなんです。大企業はアイデアの事業化を承認する際、何を始めるよりも先に、利益を突き詰めようとします。事業を推進したい側は、根拠がなくても売上上昇プランを提示するほか無いですから、すると結局、後になってその皺寄せへの対応を求められる。手間が増えるしリスクも負うことになります。

青木:スタートアップでも無理なプランを出しているものがありますが、プランを認めてもらえないと、事業側の意思決定が許されないという環境があるように思えます。とりあえずやってみる、ということは許されないのでしょうか。

松尾:3年かけて成果が出なければダメ、という流れはあります。大企業は新規事業に要求する利益の額も大きいので、到達を目指す期間として現実的ではありません。



青木:アイデアだけでは取り上げてもらえないのですか。

松尾:前例があまりないような中小企業ならば、ネガティブなことを言われないでしょうが、歴が長い会社であると失敗に対する既視感もあるし、リスクを多発させることができないので、新しいアイデアを応援するカルチャーは生れにくいです。

青木:アイデアの段階で業績の見込みが小さいと却下されてしまう、と。

松尾:だからこそスタートアップと協業する利点がありますよね。彼らはすでにトラクションや大きいお客さんを握っていることが多いですから。大企業でいうところのテストマーケが済んでいるようなものなので、ビジネスプランを想定しやすく理解も得られやすいです。

青木:前職のグリーにおいて岩永さんは、講演型ではなくVRによる対人ロール・プレイングを導入したコンプライアンス研修の実施を成功させていました。大企業に比べるとやりやすいのでしょうか。

岩永:富士通さんと比べると自由に出来たと思います。当時、インターネットを使った新サービスの導入は頑張っていましたが、アクセラレーションプログラムを担当していたときに、事業を横並びにして同じ指標で見ようとしたのは失敗でした。インターネットでユーザー数やサービスの質量によってKPI(重要業績評価指標)を満たすことに固着してしまいました。その例を除けば、新規事業の推進において複数の指標を提示するという、自由な環境づくりに成功していたと思います。

青木:自由に出来る環境は大事ですよね。

松尾:大企業はそこが難しいので、戦い方を変えなくてはいけないと思います。会社の信頼を得るには会社のKPIに寄り沿う必要がありますが、大企業だと即時には無理があるので、小さな成果を積み上げていくことでしか持続できません。大企業の要求する大きい売上に真っ向から対立するのはナンセンスで、目下で生き延びることを第一にしないといけません。

スタートアップとの協業、人材に光を当てる心がけ

ディスカッションの後半は、社内環境という前提から一歩さらに踏み込んだ内容へ。パネリストらは、新規事業に着手する人材に“生き延びて”もらうための必要なマネジメントについて、意見交換を行なった。

青木:スタートアップと協業する際、どのような姿勢を心がけていますか。

松尾:ベースラインは、スタートアップの力によって既存事業を補完し、貢献しているという事実を会社にアピールすることです。一方で、スタートアップの力を活用し、中長期的なまなざしで新しいビジネス創造をしています。新しい事業の創出を温めるために、まずは既存の事業を担保しておかなければ、元も子もありませんから。中長期的な戦力を維持するために、社内報でPRしたり社内ファンを増やしたり、会社の前進に貢献していることを実感してもらう工夫をしています。前面に掲載される、あるいは、上層部と接点があるということは自信につながるようです。

青木:岩永さんは、自身の携わる新規事業が前進した理由を、どのように考えていますか。

岩永:シンプルにいうと、この人がやりたいと思っていることを、一緒にやりたいと思えるかが大事だと思います。自分がやっている仕事が、誰のためにあるのか考えます。そうすれば自ずと頑張ろう、頑張らないといけないと思うようになります。

松尾:チームワークという意味では、新規事業を推進するうえで危機的な局面にあった際、相互利益のある他の部署と手を組んだことがあります。報告をすればするほど潰されてしまうという局面において、ホウレンソウを回避しなければいけないこともありますね。

岩永:マーケティングの出身である松尾さんのように、部門を横断することに恐れのない人は、新規事業に向いていますよね。ただひとつ絶対的なことは、失敗だと思ってもやめない、失敗を失敗と捉えない文化の大切さです。失敗だと思ってやめてしまうことが本当の失敗で、それを何かしらの成功を掴む道のりと捉えて活動し続ける文化がなければ、最終的な成功はないと思います。撤退基準に触れたから全部を捨てる、ということはしてはいけません。

松尾:私のアクセラレーター・プログラムもそうですが、プロジェクトを止めないために何をするか考えたとき、絶対に死なない、小さくてもいいから生き残るということを考えていました。必ず次に繋がる成果をつくる。

青木:ホームランじゃないからダメ、ではなく塁に出たという実績、頑張りの過程でファンを増やして応援してもらう状況を作ることは大事ですね。サービスを早く終了してよかったこと、長く続けてよかったことはありますか。

岩永:サービスの性質によります。自由にモノを作るからといっても、必ずしも社会的に有利に働くわけではありませんから、利益を早く上げるだけのために作ってしまったような、社会的にプラスにならないサービスは早くたたんで正解だと思います。利益が出なくても何かしらの意義があるならば、経営の維持を担保したうえで続けていくことも、経営判断として可能な選択だと思います。

松尾:富士通はとにかくサービスを続けるので、商品がたくさんあって、新参であればあるほど日の目を見るのに時間がかかります。だからこそ、長く続けてよかったことはたくさんあります。会社の性質的に、長く続けることは大事でした。将来的に日の目を見るために、戦略を考えたり変えたりしながら、息を長く保つことにこだわることが必要かも知れませんね。

“社内の隠れ起業家”を発掘するには?

青木:時代に後押しされることもサービスにとって決定的ですからね。最後に「社内の隠れ企業家を発掘する」という点に関して、挑戦者に光を当てるための得策はありますか。

松尾:人材の発掘も大事ですが、発掘したところで戦う場がないと意味がありませんから、何よりもアイデアをカタチにできる環境や仕組みを作ることが求められます。それから伴走者になってあげる。だから、僕は仕組みを作りました。

青木:残りの距離が分からなくては、ランナーは絶望的になります。新規事業にはゴールがないわけですから、途中で声を掛けてくれたり残りの距離を教えてくれたりする伴走者は、とても心の支えになります。

岩永:他の人を探すという発掘もありますが、自分自身のことを発掘できるような時間や場所もあるといいですね。新規事業は思い付きではありません。人と会ったり話したりするなかで自分の考えをまとめ、そして再び話し合うことで共感を得てはじめて、世の中で役立つ事業へと繋がる。自分の気持ちを発掘することをサポートすることも大事だと思います。

青木:自分自身のなかにも、起業家がいるのかも知れません。どうしてやりたいんだろう、を自分で煮詰めたり人から問いかけられたりするなかで突きつめる。そのなかでカタチになっていくという印象を受けます。松尾さんは発掘の先を作っていくことが必要という話、岩永さんは自分を見つけてくることも発掘だからまずは人に話してみることが必要という話でした。

風通しの良い職場に、新事業を応援する気風があって初めて、多種多様な実りある豊かなビジネスの土壌となり得るのではないだろうか。新たな時代に適応していくために、ビジネスの更新が不可欠であることが確かとなったいま、企業にとっては潜在するイントレプレナーを探し出すことが喫緊の課題となるだろう。

イントレプレナー・コミュニティの形成を目的としたイベント「Intrapreneur’s Hub」は、毎月開催しています。7回目となる次回の開催は7月21日(火)【Intrapreneur’s Hub Vol.7】\オンラインイベント/新規事業スキルを本業の外で磨くワケ!|(https://intrapreneurs-hub7.peatix.com/view)。Crewwが提供しているインキュベーションプログラム「Startup Studio by Creww」(https://studio.creww.me/)で新規事業に挑戦しているイントレプレナーが登壇します。

モデレーター
■青木 雄太
株式会社funky jump/CEO。東北大学農学研究科卒業後、2016年パナソニックに入社。住建分野における物流関連業務に従事。2018年3月より株式会社ゼロワンブースターに参画。その後独立し、2019年2月に株式会社funky jumpを立ち上げた。

パネリスト
■岩永 龍法
株式会社デジタルガレージ/DG Lab本部/プロジェクトマネージャ。上智大学経営学部経営学科卒。大手外資系ITベンダー(SAP/Salesforce)にて新規プロダクトのロールアウト、事業開発を経験し2013年グリー入社。グリーでは経営管理強化プロジェクトにてシステム導入に携わり、その後新規事業開発本部にアクセラレーションプログラムを担当。多数の新規事業開発に関わり、そのうちの一つ、自分自身も新規事業子会社の取締役として事業を推進するも、当初見えていなかった事業モデル上の欠点を克服出来ず、事業分割し、清算。その後、株式会社デジタルガレージに入社し、現在は新規事業開発と投資事業を営むDG Labに所属。VR/AIと言った先端技術をもつStartUpへの投資事業と新規事業開発を担当

■松尾 圭祐
富士通株式会社/FUJITSU ACCELERATOR。新卒で富士通に入社後、サーバーのマーケティング業務を担当しトップシェア獲得に貢献。その後、商品戦略の企画部門に異動し業務を通じて自前主義の商品開発に限界を感じる。危機感よりオープンイノベーション推進する組織「FUJITSU ACCELERATOR」の立ち上げに参画し、現在ではスタートアップとの協業による新規事業開発を担当している。

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