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レポート

北海道電力主催。地域型オープンイノベーションの可能性を探る。

2020.11.12

近年、多くの企業が注目するオープンイノベーションの流れは、地方企業や自治体にも波及している。そこで、北海道電力株式会社は、KPMGコンサルティング株式会社の協賛のもと、北海道内外の有識者とともに、北海道における地域型イノベーションへの可能性を議論するオンラインセミナーを設けた。

課題先進地域・北海道で、イノベーションを起こすには?

北海道は、人口減少や少子高齢化などの諸問題が、日本の他地域よりも10年早く進むとされる課題先進地域。だからこそ、地域の企業、自治体、研究機関、スタートアップが協力して問題解決に取り組むオープンイノベーションが重要となる。北海道電力株式会社(以下、北海道電力) 執行役員 総合研究所長の皆川和志さんは、以下のように語った。

皆川さん(以下、皆川):北海道電力は、1947年に技術研究所として発足し、1987年以降は地域に貢献するための総合研究所として、道内を中心に大学・自治体・企業との協業に取り組んできました。従来の取り組みも広義のオープンイノベーションといえますが、今後はこれまで付き合いのなかった領域へもネットワークを広げて、異質な者同士の掛け合わせから変革を起こしていきたいと思っています。本セミナーは、オープンイノベーションの在り方を定義づけるものではありません。視聴者の皆さんにはぜひ、多彩な講演者・パネリストの発表の中から、自らのオープンイノベーションのカタチを見出していただきたいです。

セミナーの前半は5名の有識者による講演、後半はパネルディスカションという構成で行なわれた。講演を務めたのは、KPMGコンサルティング株式会社 プリンシパル 巽 直樹さん、株式会社KPMG FAS 執行役員 パートナー 阿部 薫さん、株式会社日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ日立京大ラボ 担当部長 沖田京子さん、株式会社INDETAIL 代表取締役CEO 坪井大輔さん、北海道物流開発株式会社 代表取締役会長 斉藤博之さんだ。

講演1「なぜオープンイノベーションが必要か」

まず、KPMGコンサルティング株式会社(以下、KPMG) プリンシパルの巽 直樹さんが、本セミナーのキーノートとして、オープンイノベーションの必要性を説いた。

巽さん(以下、巽):そもそも、イノベーションとは、英和辞典の訳では「革新」。つまり、「古いものを捨てて新しいものに変える」ことを指します。経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、Neue Kombination(=New Combination=「新結合」)を提唱し、新しいものの出会いがイノベーションを生むとしました。とりわけビジネスにおいては、「世界的な経済活動と発展により、広く世界が変革すること」を指します。

事業としてのオープンイノベーションの走りは、80年代のアメリカ。景気悪化による研究開発費の削減から、外部に知見を求めたことに端を発します。90年代にはオープンソースの開発が活発化し、90年代後半には、IntelやGoogleのようにオープンとクローズを組み合わせた戦略をとる企業も登場しました。日本においては、企業の開発研究部門からオープンイノベーションが発達し、その後IT企業によるアイデアソン・ハッカソン、産学連携、自治体での取り組みなどの広がりを見せています。

KPMGは、日本全体の問題である「企業の長期後退」、さらに北海道においては「人口減少」「インフラ維持」「エネルギー利用」「デジタル化への対応」のために、地域型オープンイノベーションを提案しています。

最後に、経営における重要な視座を、オライリー&タッシュマンの長年の学術研究から一般向けに著された『両利きの経営』を日本訳版解説から紹介します。ビジネスにおいては、既存のビジネスと新規投資とのバランス感覚が重要です。しかし、多くの企業は目先の収益のために、新規事業を軽視しがち。従来のビジネスに偏るとイノベーションが枯渇してしまいます。企業の将来を切り拓く新規事業のために、オープンイノベーションが重要となるのです。

講演2「地域型オープンイノベーションのトレンド」

続いて、株式会社KPMG FAS(以下、KPMG FAS)執行役員パートナーの阿部 薫さんから、地域型オープンイノベーションの取り組みについて発表いただいた。

阿部さん(以下、阿部):KPMG FASは、国際的なネットワークを持つ会計系アドバイザリーファームとして、経営戦略、M&A、事業再生、フォレンジックという4事業を展開し、私はそのなかの地方創生事業を推進しています。

地域型オープンイノベーションという考え方以前から、地域活性化・地方創生のキーワードのもと、各地域で様々な取り組みがされていますが、事業を成長させることは容易ではありません。なぜなら、地域の中核企業、金融機関、行政、教育機関の連携を欠くことが多いためです。

KPMG FASでは、スタートアップコミュニティを運営するCreww株式会社と約3年前から協力し、地方にもオープンイノベーションをもたらす取り組みを行なっています。特色は、地方銀行をネットワーク化して、地域の課題を効率的に吸い上げ、一丸となって解決していく点です。

そのための手法として、アクセラレータープログラムを採用しています。一般的には、大手企業の事業アセットを全国のスタートアップに開放してビジネスアイデアを募りますが、私たちはその座組を地域に置き換え、地域金融機関、地域中核企業、行政教育機関が協力した地域型プログラムを開催しています。

地域型プログラムでは基本的に、3ステップを各3ヶ月ずつ、計約9ヶ月間をかけて新事業を創出していきます。ステップ1では準備期間フェーズとして、テーマ設定、アクセラレーターの選定、エントリーページの作成を行います。ステップ2ではマッチングフェーズとして、エントリー募集からプレゼンテーションを開催します。選考はこの段階で行います。ステップ3では事業化フェーズとして、選考で残ったプロジェクトの実証実験を約3ヶ月かけて行い、事業化できるか判断します。

スタートアップ企業はスケジュールにシビアなので、事前にスケジュールを提示しておくことで、活発な応募が得られます。また、テーマおよびアクセラレーター企業を柔軟に組み替えることで、単発の試みで終わらず、継続・持続的なオープンイノベーションが可能になるのです。

その結果、以下の3つの成果があらわれています。
①地域の課題や地域中核企業のニーズを的確に捉えたプログラム設計を行うことにより、実効性が向上。
②プログラム式(スケジュール明確化)を採択することで参加者に主体性が生まれ、迅速に進む。
③行政や教育期間を巻き込むことで、地域における諸施策との連携や一体性も図れ、真の地方創生を実現。

地域経済の根幹をなす地域中核企業の新規事業を生み出す意義は、2つあります。まず、金融機関に投資機会がうまれ、資金需要を創出できること。2つ目は、地元の雇用を創出できること。北海道でも地方創生の取り組みにぜひ、ご一緒したいと思っています。

講演3「日立製作所におけるオープンイノベーションについて」

大手企業の立場からは、株式会社日立製作所(以下、日立製作所) 研究開発グループ 基礎研究センター日立京大ラボ 担当部長の沖田 京子さんに発表いただいた。

沖田さん(以下、沖田): 10年にわたって社会イノベーション事業を取り組んできた日立製作所の取り組みから、市民・地域共創についてお話しします。元々、社会イノベーション事業は、ICT(情報通信技術)による都市インフラ整備を主としていましたが、名誉フェローの小泉英明博士(脳科学者)のもとで事業を進めるうちに「精神的幸福に資する考え方」の重要性が高まってきました。

あらゆる人が幸福に生きられる社会創出に向けて、日立製作所では、国内に4つの共同研究ラボ(東大ラボ、京大ラボ、北大ラボ、神戸ラボ)を開設。北大ラボでは、北海道の岩見沢市で食と健康をテーマにまちづくりワークショップを開催し、地域の方々と対話する場を設けました。地域の人は地域の長所短所を知り、アイデアをもっているので、地域の人の想いをくみ取る産学官民の対話の場作りは企業にとっても重要です。

これからの社会イノベーションは、皆さんの思いを聞くところから始まります。また、日立は2019年から、社会価値と環境価値の重要性を解いた「POWERING GOOD」というスローガンを発信しています。人々にとって良いことを誠心誠意考え、その実現に我々の技術力を生かしていく所存です。

講演4「スタートアップからみた北海道のオープンイノベーションの現場と課題」

地元スタートアップの立場からは、スマホアプリ開発のITベンチャーとして起業し、現在はブロックチェーンを駆使した事業を展開する、株式会社INDETAIL(以下、INDETAIL) 代表取締役CEOの坪井大輔さんから発表いただいた。

坪井さん(以下、坪井):INDETAILは、「UPGRADE THE WORLD!(世界をアップグレードする)」のビジョンのもと、産業×テクノロジーで時代に適応した産業を創出します。ブロックチェーンはテクノロジーのひとつであり、オープンイノベーションの手段として活用しています。

ブロックチェーンの中でも、弊社が得意とするのはコミュニティ創造領域。管理者に依存しない、P2P(Peer to Peer=サーバーを経由せずに機器同士が繋がる処理)を主体とした新たな仕組み作りに取り組んでいます。

事業の一例に、北海道の過疎地域である厚沢部町で行なったMaaS(Mobility as a Service)プロジェクト「ISOU PROJECT」があります。EV自動車のオンデマンドサービスなのですが、運賃で利益が出る地域ではないので、地域通貨を発行しました。この地域通貨は、町内の施設を利用すると手に入る仕組みにし、町内の店・施設の利用が促進されます。その結果、4000人に満たない町でも、1億6000万円ほどの経済効果がありました(試算)。

INDETAILのブロックチェーンビジネスの共通点は、「グローバルではなくローカル、そして強者ではなく弱者の世界へのアプローチであること」。北海道(特に地方)には、広大な土地に分散したコミュニティが多数あるために、経済・リテラシー弱者が多く、それに伴った都心部との格差があります。その解決のために、テクノロジーを活用しています。

また、地方企業として、現在のオープンイノベーションはVC投資になっているのでは?と疑問を投げかけたいと思います。金余り状態の金融機関と大手企業による投資がオープンイノベーションの目的になると、スタートアップは投資対効果を求められるので、経済合理性の成り立たない過疎地域は恩恵を受けることができません。よって、地域格差は改善されず、地域経済も活性化しません。地域型オープンイノベーションでは、従来のオープンインベーションのロジックではないものを生み出す必要があるのです。

北海道に必要なのは、投資とリターンを目的としたオープンイノベーションではなく、「構造改革というオープンイノベーション」ではないでしょうか。分散型社会に適応したサービスや、分散構造を改革するインフラの作り直しの必要性を感じます。

講演5「次世代物流の方向性」

地元中小企業の立場からは、北海道物流開発株式会社(以下、HBK)代表取締役会長の斉藤博之さんに、物流の効率化を図る新たな取り組みについて発表いただいた。

斉藤さん(以下、斉藤):私は長年物流に携わりながら、現在では6社の会社を経営しています。うち、HBKは「荷物・人・車」の事業の集積として、物流の企画運営、運送、作業を担います。

現在の北海道の物流の問題は、一カ所の物流センターから配送するハブ&スポーク方式を採用している点。このまま少子高齢化が進み、経済が縮小していくと、1回あたりの配送量が減り、費用は上がってしまいます。そこでHBKでは、物流の崩壊を食い止めるために3つの施策に取り組んでいます。1つ目は、大きな車が店舗を巡回するミルクラン方式を導入すること。2つ目は、積載率を高めること。従来は、荷物のカテゴリーごとに車を分けていましたが、積荷をモジュール化することで、冷蔵食品や建材などを混載し、地域共同配送にします。この試みは、2020年2月に実証実験を実施しました。3つ目は、シームレスな検品システムの導入です。作業員のヘルメットや帽子にカメラを付け、作業動線のなかで積荷のQRを認識させることで、作業の手を止めずに検品ができるよう、大手メーカーと一部検証段階に入っています。

また、新しい物流システムとして、物流版LCC構想も描いています。従来にはない予約システムとダイナミックプライシングを入れることで、効率的な配送を実現したいです。

オープンイノベーションの取り組みとしては、フィジカルインターネットの構築を目指しています。大量の荷物を常に自社の倉庫に集めてから自社の車両で配送するのではなく、最も効率的なルート上にある車両や施設を利用して荷物を運ぼうという考え方です。物流の仕組み自体を地域の人に担ってもらうために、有志の方に地域物流会社も立ち上げていただきました。運送方法を地域の皆さんと一緒に考えながら、北海道の隅々までものが届くようにしたいと思っています。

パネルディスカッション「北海道におけるオープンイノベーションの今後の展望」

後半は、KPMG マネージャーの渡邊崇之さんのモデレートのもと、有識者5名によるパネルディスカッションが行われた。パネリストは、経済産業省 北海道経済産業局(以下、北海道産業局) 産業技術革新課 課長補佐の南 智彦さん、国立大学法人北海道大学(以下、北大) 産学・地域協働推進機構 産学連携推進本部 本部長の寺内伊久郎さん、公益財団法人北海道科学技術総合振興センター(以下、ノーステック財団) 専務理事の土合宏明さん、Creww株式会社(以下、Creww) Business Development Managerの長田耕介さん、北海道電力 執行役員 総合研究所長の皆川和志さんだ。

渡邊崇之さん(以下、渡邊):まず、各パネリストが所属する組織における、オープンイノベーションの取り組みを伺いましょう。

南さん(以下、南):北海道経済産業局では、オープンイノベーションのほか、スタートアップ支援や産学協同の推進を行なっています。具体的には、首都圏の大手企業のニーズに道内のスタートアップをマッチングさせる「ビジネスマッチング事業」と、道内の支援機関との推進体制の強化です。どちらも、継続的なビジネスマッチングの場作りを意識しています。

寺内さん(以下、寺内):北大の産学連携推進本部は、その名の通り、産学連携活動の推進全般を担います。具体的には、知的財産発掘、特許ライセンス活動、技術移転活動、共同研究誘致、アントレプレナー教育などです。

土合さん(以下、土合):ノーステック財団は、北海道全域を対象に、研究開発〜事業化まで一貫した支援をするために設立された組織です。我々は、予め用意した支援メニューにこだわらず、相談内容に寄り添った支援に努めています。人や企業をつなぎ、課題解決の提案にも取り組んでいくことで、新たな価値の創出に挑みます。特に、食・バイオの分野では、20年にわたるノウハウがあります。

長田さん(以下、長田):Crewwは「大挑戦時代をつくる」というビジョンのもと、2012年からオープンイノベーション・プラットフォームを運営しています。具体的には、アクセラレータープログラムのCreww accele(クルー アクセラ)、新事業開拓に向けてのティップスなどを提供するSteams (スチームス)などのサービスを提供しています。

皆川:北海道電力がオープンイノベーションを強く意識し始めたのは3年前のことで、より効果的に推進させるために、4つの強化領域(「新たな時代の安定供給の実現」「新たなエネルギーサービスの展開」「オープンイノベーションの推進」「先端技術の活用によるDXの推進」)を設定したり、体制強化をしたりしました。今後は、何においてもデジタルが基盤になるので、プラットフォーム構築に注力しています。地域に根ざした会社として、地域の人々と目線を合わせて一緒に価値を作っていきたいです。

渡邊:続いて、北海道において、企業・行政・大学・スタートアップが協力してオープンイノベーションを推進する意義を、各人どのようにお考えですか?

南:結論から言うと、北海道での取り組みはまだまだこれからだと思っています。機関連携に関しては、道内には支援機関が多いので、各人がオープンイノベーションの有効性を認識すれば、産学官の取り組みはより加速すると思います。

寺内:大学が研究成果で社会に貢献する方法としては、企業に事業化してもらうか、先生自身がスタートアップを起こすか、という大きくは2択ですが、様々な知を集めるという意味でもオープンイノベーションの存在は大きいです。大学・企業・自治体が協力して、高い評価を受けている取り組みとしては、国が推進するCOI(センターオブイノベーション)「 食と健康の達人」があります。公的立場を持つ北大が中核として参加することで、健康経営都市宣言をしている岩見沢市の協力が得られ、市内の医療機関からデータを提供してもらうこともできました。

土合:北海道の未来のためには、地域の特色・強みを生かしていく必要があります。ですから、我々は従来の「つなぐ」活動に加えて、企業や研究機関にもアイデアを投げかける努力を行いたいと思っています。地域に暮らす人は良くも悪くも先入観を持っているので、異文化を持った人・企業と接する機会を設けることで、発想の転換を得てもらいたいです。

長田:北海道におけるイノベーションの土台を作る意味で、地元企業やスタートアップに光を当てたいです。東京のスタートアップとのつながり構築も大切ですが、地元で挑戦する人に機会や場を与えることで、地域が活性化されますから。そういった土台があってこそ、社会問題や構造改革といった複雑な課題への解決の一手が打てるのではないでしょうか。

皆川:北海道が抱える課題を乗り越えるには、イノベーションが不可欠です。そのために、今後の北海道のシナリオを冷静に見極め、従来の方法の延長線上で対応可能な問題と、イノベーションが必要な問題とを整理する必要があります。その上で、産官学民が連携したイノベーションを起こすには、ニーズとシーズ(世の中に出ていないビジネスのタネ)を正しく理解し、その間を埋める立場が必要になるのではないかと思っています。

渡邊:オープンイノベーションの長所は、大学や大企業が開発研究してきた技術を、地域課題・事業課題の解決に活用できることですが、導入には課題も伴います。オープンイノベーションにおける課題をお聞かせください。

南:オープンイノベーションには、大企業が社外スタートアップからアイデア・技術を得るイメージがあると思いますが、北海道には大企業がたくさんあるわけではありません。道内間でのマッチングを進めながらも、まずは他県の企業とのマッチングに着手すベきだと思います。我々は地元企業が道外に情報発信をするための環境整備にも取り組む所存です。

寺内:北大は12学部・21大学院が揃う知の集積地ですが、まだオープンイノベーションは特定の学部(医学部、工学、情報など)に限られ、大学の知が民間・社会に十分届いていないことが課題です。例えば、文系でAIの研究をしている研究者や、心理学、マーケティングの研究者を企業とマッチングさせられれば、社会に役立つと思っています。また、オープンイノベーションといっても、大学はまだまだ企業と腹を割って話す機会が少ないと感じています。

土合:オープンイノベーションで企業と研究者とがマッチングしても、お互いの文化の違いからうまくいかないことが多々あります。そういったミスマッチを防ぐために、我々は地域の支援機関としてのノウハウを生かし、仲介の役割も担っています。

長田:企業の新規事業担当と話すと、1度のアクセラレータープログラムで利益を出すことを目的している企業があります。オープンイノベーションの目的は、常にアイデアが溢れ出てくる体制作りだと思うので、長期的な目標を設定してやり続けることも大切です。その場合、社内でアントレプレナーを育てるとともに、役員・経営者の理解も重要になります。社内の声だけでは上層部に響かないこともあるので、弊社では上層部に対してオープンイノベーションの説明をさせてもらうこともあります。

皆川:長田さんの言う通り、オープンイノベーションは一度では終わりません。繰り返しできる体制づくりが大切で、繰り返すことでノウハウが蓄積されます。その意味では、Crewwのようなプラットフォーマーに、各社のニーズとシーズをまとめたデータベースを用意してもらえると、オープンイノベーションを開催する立場としては、検討がしやすいですね。

渡邊:最後に、今後の北海道のオープンイノベーションにおける、アクションや展望をお聞かせください。

南:まず、必要なアクションは、地域企業にオープンイノベーションの有用性を理解してもらうことでしょう。さらに、地域企業に一番身近で接する地域の金融機関や支援機関が、地域型オープンイノベーションの芽をきちんと育てていくことが必要です。

寺内:大学も今後は、研究シーズの見せ方や出し方を工夫していかなければいけないと思っています。ロバスト農林水産工学国際連携研究教育の拠点として活動している北大では、研究シーズと現場ニーズのマッチングの場として、部局横断で研究者に会えたり、企業・地方自治体などともコミュニケーションが取れます。農林水産業ご興味のある方はぜひ、参加してみてください。

土合:北海道の企業は中小規模が多く、新事業に取り組みたくても資本力の問題を抱えています。オール北海道での取り組みを応援し、事業化につなげていきたいです。

長田:新事業をスタートさせるための実証実験には、行政や自治体の協力が必要です。アクセラレータープログラムでの地方金融機関との連携から一歩進んで、地域の連携も強化していきたいです。

皆川:社会課題解決のためのイノベーションにおいては、オール北海道での参加が大切だということを、道民一人一人に理解してもらい、取り組んでもらいたいです。北海道電力のなかにも、企業や個々人の中にも、ニーズとシーズがあります。だからこそ、顔を突き合わせて、意見や悩みを共有するなかで、課題を発見・解決していきたい。そして、地域の問題解決のためのイノベーションにとどまらず、世界標準のイノベーションを起こす意識を持っていきたいと思います。

登壇者
■ 巽 直樹
KPMGコンサルティング株式会社 プリンシパル。1989年東洋信託銀行入社、2000年東北電力へ転職。その後、インソース執行役員、新日本監査法人エグゼクティブディレクターなどを経て、2016年KPMGコンサルティング入社、2019年より現職。博士(経営学)、国際公共経済学会理事、元学習院大学特別客員教授。著書に『まるわかり電力デジタル革命キーワード250』(共著、日本電気協会新聞部刊)などがある。

■ 阿部 薫
株式会社KPMG FAS 執行役員パートナー。1996年三和銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。その後、不動産ファンド執行役員、独立系アドバイザリーファームの大阪支店長を経て、2017年よりKPMGにて地方創生事業を担当。著書に『続・事業再生とバイアウト』(共著、日本バイアウト研究所/編)がある。

■ 沖田京子
株式会社日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センター 日立京大ラボ 担当部長。IT事業のマーケティング、スマートシティ事業の広報・宣伝業務を経て、産学官民で対話する場のデザイン、手法の開発を手掛ける。地域・住民が協創して生まれるインクルーシブな社会の実現をめざす。

■ 坪井大輔
株式会社INDETAIL 代表取締役CEO。1977年生まれ。小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻MBA取得。ITベンチャーを札幌で起業し、C2Cコマース・ゲーム事業等で年商10億を築くも全てをEXIT。現在はブロックチェーン事業に集中している。著書『WHY BLOCKCHAIN』は今も増版が続く。

■ 斉藤博之
北海道物流開発株式会社 代表取締役会長。自動車整備士を経て、1992年、24歳の時にトラックドライバーとして物流業界に入る。1998年、共同配送の先駆けとして、主に冷凍輸送を生業とした「北海道物流開発」を設立。以来、北海道を元気にする新たな物流の仕組創りのため、DXを念頭に置き産官学と連携して新たな各種方策に挑戦中である。この間、2016年4月、札幌商工会議所青年部の初代会長に就任。(2019年3月退任)

モデレーター
■ 渡邊 崇之
KPMGコンサルティング株式会社 マネージャー。2005年トヨタ自動車株式会社入社。その後、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社セガゲームスを経て、2017年KPMGコンサルティング入社。事業会社での商品企画・経営企画業務の経験をもとに、オープンイノベーションの支援に従事。

パネリスト
■ 南 智彦
経済産業省 北海道経済産業局 産業技術革新課 課長補佐。2020年4月から現職。オープンイノベーション促進の他、「札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会」と連携したスタートアップ創出支援、「産学融合拠点創出事業」等を通じた産学官連携の推進等に取組中。

■ 寺内伊久郎
国立大学法人北海道大学 産学・地域協働推進機構 産学連携推進本部 本部長。 1984年松下電器産業株式会社(現:パナソニック株式会社)入社。民生用・放送業務用のオーディオ・ビデオ機器の研究開発を行った後、2000年2月より本社知的財産部門にて全社知財行政・知財戦略立案・国内外知財権利化(社内代理人)などの知的財産業務全般に従事。2014年3月より国立大学法人北海道大学にて勤務。特任教授・弁理士。

■ 土合宏明
公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 専務理事。1984年北海道電力入社、火力発電所、研究開発部門勤務を経て、2015年環境室長、2019年公益財団法人北海道科学技術総合振興センターに出向、参事。2020年4月より現職。博士(工学)

■ 長田耕介
Creww株式会社 Business Development Manager。Crewwでは主に事業会社への新規事業創出を目的としたオープンイノベーションプログラムの導入をメインミッションとして担う。他にも、金融機関との業務提携や行政とのアライアンスにも従事。これまで30以上のプロジェクトに携わり、運営支援を実施。

■皆川和志
北海道電力株式会社 常務執行役員 総合研究所長。1985年北海道電力入社。工務部門、研究開発部門、情報通信部門(事業、通信、情報システムなど)を経て、2017年6月から現職。

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