TOP > テクノロジー > CES 2021でスタートアップの展示会はどう変わるか? 有識者が対談

テクノロジー

CES 2021でスタートアップの展示会はどう変わるか? 有識者が対談

2020.07.13

毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大のテックトレードショー・CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)は、そのイベント規模や知名度、影響力から、スタートアップの世界進出を志向する起業家や大手企業にとって、至上の舞台となっている。 そして先日、CES 2021は例年通り現地の会場で開催することが発表された。それに伴い、 日本発スタートアップの出展ゾーン「J-Startupパビリオン」のエントリーもキックオフ。 一方で、2021年の1月にはまだ、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の余波が大いに予想できる。集客や出展数の変動が予想されるCES 2021において、日本の展示ブースJ-Startupパビリオンでは、どのような趣向が凝らされることになるだろうか。JETRO(日本貿易振興機構)の担当者と、CES 2019よりJ-Startupパビリオンのプロデュースをともに手掛ける3人の外部アドバイザーとで、新時代の展示についてディスカッションの場を設けた。

スタートアップの祭典としてのCES 2021

CES 2021の現地開催決定を受け、JETROは2020年7月1日、エントリーの募集PRおよび「これからの時代のスタートアップが展示会に求めるものをともに考える」ためのディスカッションイベントをオンラインで開催した。イベントは2つセッションで構成され、1つ目のセッションでは、CES 2021の担当者であるJETRO/スタートアップ支援課・瀧 幸乃さんが出展エントリー情報の開示を行なった。

瀧 幸乃さん(以下、瀧):CESは毎年1月に米国・ラスベガスで開催される世界最大のテックトレードショーです。当初はコンシューマー・エレクトニクス・ショーとして主に消費者家電を展示していましたが、最近はスタートアップ企業が多く出展するようになったことから、テクノロジー/イノベーション・ハブとして知られています。東京ドーム約50個分相当の面積を誇る会場に、CES 2020では160ヶ国以上から18万人が来場し、大手・スタートアップを含めて4,500以上の企業の出展がありました。

CES 2021においてJETROは、世界50ヶ国以上から1,200社以上のスタートアップが出展することで世界的な注目を浴びるブースEureka Parkで、J-Startupパビリオンを展開します。また、より多くのスタートアップ企業に活躍してもらうために、ある程度成長したスタートアップや大手企業等のプロダクトはSands Expoに展示する予定です。具体的には、Eureka Parkに約50社、Sands Expoに約15社の出展を予定しております。Eureka Parkのエントリー審査基準は、ローンチ前、もしくはローンチ後1年未満の企業のみ。このクライテリアに満たない企業でも、起業3年未満で指定のカテゴリーに該当する場合はCTAの規定により出展枠の25%程度まではEureka Parkへの出展が可能です。それでも基準に合わない場合は、Eureka Parkと同展示会場の2階に位置するSands Expoへの出展をおすすめします。応募の際、消費者家電として消費者にどのような利益をもたらすかという点をアピールして下さい。締め切りは7月26日(日)23:59、JETROウェブサイト上でエントリーが出来るので、よろしくお願いします。

▼申込ページ:7/26(日)23:59 〆切
https://www.jetro.go.jp/events/iib/0cebfe79daca9003.html



続いて、CES 2020を担当したJETRO/スタートアップ支援課の深澤竜太さんが、2020年のCESにおけるJ-Startupの実績を以下のように紹介した。

深澤竜太さん(以下、深澤):CES 2020でJ-Startupは前年よりもスペースを拡大し、28社を出展させていただきました。4日間にわたる開催期間のなかで、商談は途絶えることなく取り交わされ、総数5,909件、一社平均210件が設けられました。寄せられた声として、「事業戦略やパートナー探しのきっかけになった」「多種多様な価値観を持つ人からフィードバックやアドバイスをもらえた」「目的意識をすぐに共有できて商談に繋がりやすかった」「市場調査を行なうのに最適な環境だった」などがありました。スタートアップの認知度を向上させる良い機会になったと思います。

オンライン展示への期待と、効果的なアピールとは

2つ目のセッションは、ディスカッション。新型コロナの影響を鑑みた2021年のJ-Startupパビリオンの展示方法が検討された。モデレーターは、株式会社HEART CATCH/代表取締役 西村真里子さん。パネリストは、株式会社Shiftall/代表取締役/CEO 岩佐琢磨さん、合同会社EDGE of Innovation/代表 小田嶋アレックス太輔さん、JETRO/スタートアップ支援課・瀧幸乃さん、JETRO/スタートアップ支援課・深澤竜太さんだ。

西村真理子さん(以下、西村):CES 2021はオフライン開催となりますが、まだ新型コロナの先読みが出来ないので、国内外問わず戸惑う出展者やお客さんがいると思います。そこで現在、J-Startupは一部でのオンライン開催を検討しているところです。その場合、どのような仕組みを用意すれば、みなさんのプロダクト及びソリューションを魅力的に紹介することができるかについて、意見の収集も含めたディスカッションを行ないたいと思います。

岩佐琢磨さん(以下、岩佐):オフラインで開催されるとしても、CES 2021の規模縮小は避けられないと思います。私たちは現在、オフラインとオンラインとのハイブリッドな展示方法を考えています。

西村:ハイブリッド型の展示方法として具体的に挙げられるアイデアは、オフラインのデジタルデバイスを用いてオンラインで展示を楽しんでもらうというものです。オンラインで提供した基本情報をもとに、オフラインの現地会場では用意されたディスプレイやグラスのみを使用し、再びオンラインでコミュニケーションを取るという案。しかし、動きを楽しんだり触ったりするような、フィジカルに訴えるプロダクトでは成立しないことが懸念されています。

岩佐:オンライン要素を強化するとなると、Wi-Fiの問題が大きいと思います。今年度の混雑具合は読めませんが、例年通りの繋がらない状況を予想して対策を練ることが無難だと思います。ハイブリッド型で展示を行なうとしたら、持ち込みのWi-Fiではなく有線での対応を徹底する予定です。

深澤竜太さん(以下、深澤):少し前にオンライン開催されたTechイベント・コリジョンを担当したときの個人的な印象としては、思っていた以上にセッションが主としてブロードキャストされており、チャット等のネットワーク機能こそあったものの、出展のイメージが弱かったです。

小田嶋アレックス太輔さん(以下、小田嶋):私もコリジョンに参加したのですが、相当数のミーティングリクエストが30分刻みで埋まり、現在もイベントの影響は継続しています。従来のオフラインイベントでは、出会った人とその場で話していましたが、オンラインイベントではマッチメーキングに力が入れられていました。

岩佐:カンファレンスやセッション主体のオンラインイベントは以前もあったと思いますが、CESにおいてオンライン展示を考えている方は、もっと展示にウェイトを置く方法を求めているのではないでしょうか。その点での良い具体例やアイデアはないでしょうか。

小田嶋:確かに、これまでのオンラインイベントでは、出展という概念が成り立っていませんでした。ただコリジョンは、現地にブースを出していない側の情報を目立たせる工夫が、空気づくりの段階から徹底して準備されていた点で、他のオンラインイベントと異なっていました。実際、リモートからの働きかけが、来場者対来場者のとき以上に盛んでした。

西村:とにかくデジタルツールをどれだけ有効活用できるかが重要ですよね。オンラインを徹底すると参加者と出展者の区分けが無化すると思いますが、そのなかで国に所属した出展を行なうことの意義はあるのでしょうか。

瀧:CESの出展審査を通過するだけでもブランディングのひとつになるし、日本として大々的に広報することの意義はありますよね

岩佐:具体的な内容は定まっていませんが、オンラインやハイブリッド型の場合でも、料金に見合うオフィシャルな働きかけが、オフラインで出展した場合と変わらずきちんとされるはずなので、メリットは十分にあると思います。

西村:CES側も検討しているところでしょう。そこでオープンに話し合って、希望に見合う展示方法や措置をとるという流れを作ることは大切ですね。

スタートアップには、メディアカバレッジでの掲出も重要

ディスカッションの後半では、スタートアップの効果的なアピール方法として、メディアカバレッジの重要性と獲得の手段について話し合われた。



西村:私はメディア枠でCESに参加していますが、スタートアップの認知を広めるためには、CES公式のプレビューイベントであるCES Unveiledが欠かせないと思います。メディアは、動いているものや触れるものなど動画化できるものに依存しているので、そこに訴えかけなくてはいけません。

岩佐:本当に。ブースで動画がないと言った瞬間に立ち去られてしまうくらい、ここ数年で動画文化が浸透しています。また、テクノロジーを謳ってもほとんどの人は興味を持たないので、サステナブルなど、現在の欧米でトレンドになっている論調に従ってアピールする必要があります。CES Unveiledには数多くの有名記者が来るので大事ですね

西村:取材の際は少しでも多く新しいものを撮りたいので、分かりにくいものには目が向けられません。一目見ただけで伝わるレイアウトが必要になります。もしくは、一見普通に見える製品でも「何やっているのだろう?」と思わせる演出が必要です。極端なことをいうと、モノがないならパフォーマンスで訴えかける

岩佐:あと、CES Unveiledと同じく、Showstopperというプレスイベントにも参加すると良い。速報系を狙ったCES Unveiledと異なり、きちんとした説明をじっくり取材してもらえる場なので、プロダクトの視覚よりも内容に訴えたいものはShowstopper向きです。もしくは、エントリー料を払うことにはなりますが、Innovation Awardに参加することでメディアの注目を集める方法もあります

小田嶋:いまや日本は技術の国とされてはいませんが、目立ち方という点ではJ-Startupパビリオンは魅力があります。LOVOT(家庭用ペット型ロボット)やGatebox(キャラクター召喚装置)みたいな変り種のプロダクトが注目されており、言語や見た目など、ブースに入ってもらうための工夫もしていて、集客力が高いので、少なくともオフラインに関しては、やはり日本というチームで出すメリットは大きいですね

瀧:CES 2021はまだ不透明な状況ですが、オフラインでもオンラインでも魅力的な出展を可能とするために頑張りたいと思います。

CES 2021のJ-Startupパビリオンが、オンラインを駆使した魅力的な空間となることは間違いないだろう。従来的なオフラインのブースにデジタルがどのように活かされていくのか、日本のスタートアップが世界に羽ばたく可能性とともに、期待を大きく向き合ってはいかがだろうか。

<CES 2021 J-Startupパビリオン出展メリット>
●通常なら約数十万円のCESブース出展やメディア限定イベントへの参加費(審査あり)→無料
●英語でのピッチトレーニング・事前メンタリング→無料
●PR動画のプロデュースや制作支援(一部企業に限定)→無料
●各社ニーズに合わせた海外企業との事前商談アレンジ→無料

▼7/1(水)CES 2021キックオフ・ウェビナー資料
https://www5.jetro.go.jp/newsletter/iib/2020/CES2021/CES 2021_webinar_20200701.pdf

▼申込ページ:7/26(日)23:59 〆切
https://www.jetro.go.jp/events/iib/0cebfe79daca9003.html

モデレーター
■ 西村真里子
株式会社HEART CATCH 代表取締役。
国際基督教大学卒。日本アイ・ビー・エムでITエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、アドビシステムズでフィールドマーケティングマネージャー、バスキュールでプロデューサーを経て、2014年に株式会社HEART CATCH設立。J-Startupサポート企業、Art Thinking Improbable Workshop Executive Producer 、内閣府第一回日本オープンイノベーション大賞専門委員会委員、経産省第4次産業革命クリエイティブ研究会委員、武蔵野美術大学 大学院 クリエイティブイノベーション学科研究室 非常勤講師。

パネリスト
■ 岩佐琢磨
株式会社Shiftall 代表取締役CEO。
1978年生まれ、立命館大学理工学研究科卒。 2003年から松下電器産業(現パナソニック)株式会社にてネット接続型家電の商品企画に従事。2007年12月より、ネットと家電で生活をもっと便利に・豊かにする、という信念のもと、ネット接続型家電の開発・販売を行う株式会社Cerevo(セレボ)を立ち上げ、代表取締役に就任。世界初となるインターネットライブ配信機能付きデジタルカメラ『CEREVO CAM live!』や、既存のビデオカメラをライブ配信機能付きに変えてしまう配信機器『LiveShell』シリーズなどを販売。 2012年3月からはクラウドファンディング分野に参入、ガジェットに特化したクラウドファンディングサービス『Cerevo DASH』を運営し、ガジェット・スタートアップを製造面・販売面から支援している。

■ 小田嶋アレックス太輔
合同会社EDGEof Innovation 代表。
事業立ち上げの専門家として、数々のスタートアップや大企業の事業部立ち上げに従事。現在は、株式会社EDGEofのco-CEOとして、日本のイノベーションエコシステムの国際化に邁進、20カ国以上の政府と様々な取り組みを進めている。J-Startup推薦委員。

この記事をシェアする